被害者の抵抗と市民の阻止により未遂に終わる
過去2年間で同業界を狙った犯行が5件発生

フランス・パリの中心部で、暗号資産取引所のCEOの家族が誘拐されそうになったが、市民の阻止により未遂に終わるという事件が発生した。
14日(現地時間)ロイター通信は、前日午前8時20分頃、フランス・パリ11区で覆面を被った男4人が妊娠5か月の30代女性を誘拐しようとした事件を報じた。被害女性は、フランスの暗号資産取引所「ペイミウム(Paymium)」のCEOの娘であることが明らかになった。彼女は市民の助けにより誘拐されることなく、その場で救出されたという。被害女性は精神的ショックを受けたことで治療を受けており、夫は顔に怪我を負ったとされている。
AFPは、配達会社クロノポストのロゴが貼られた白いバンから覆面を被った男3人が飛び出し、被害女性を引きずって無理やり車に乗せようとしたと報じた。被害女性は襲撃者が持っていた銃を奪い取って通りに投げ捨てたが、この銃は模造品であることが明らかになった。
ソーシャルメディアに拡散された当時の映像を見ると、誘拐犯たちが女性を車に無理やり押し込もうとし、彼女の夫が必死に引き止めている。誘拐犯と揉み合う中で被害者が叫び声を上げ、それを聞いた市民たちが一人、また一人と集まった。そのうちの1人は消火器を持って現れ、誘拐犯に向かって走っていった。誘拐犯らは最終的に諦めてバンに乗り込み、この市民は遠ざかっていくバンに向かって消火器を投げつけた。現場から逃走した4人の誘拐犯は、現在もまだ逮捕されていないという。
パリ検察庁は「誘拐未遂事件の捜査が始まった」とし「組織犯罪捜査班が捜査を進める予定だ」と明らかにした。クロノポストは公式声明を通じて「誘拐に使用された車両は、当社のブランドを偽装したものだった」と発表し、また、ブルーノ・ルメール内務大臣はこの日、暗号資産業界の関係者らと会議を開き、セキュリティ強化策について協議したと伝えられた。
フランスで暗号資産業界の関係者が犯罪の標的となったのは今回が初めてではない。CNNは「ここ数か月間に起きた2件の襲撃と、2023年以降に起きた少なくとも5件の襲撃を含め、フランス国内で急成長している暗号資産業界の関係者を狙った一連の暴力事件の中で、今回が最も最近の事件である」と報じた。5月1日には、ある暗号資産起業家の父親がパリ14区で誘拐され、指を切断されるという被害に遭った。また1月には、暗号資産企業「レジャー」の共同創業者であるダビッド・バラン氏が、妻とともに自宅で誘拐され、1,000万ユーロ(約16億4,600万円)の身代金を要求されるという事件が起きた。バラン氏は手を切断され重傷を負ったが、警察の作戦により救出されたと伝えられている。