
メキシコ政府は、米スペースXの火星宇宙船「スターシップ(Starship)」の爆発による環境汚染被害を確認し、法的措置を講じる方針を示した。
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は25日(現地時間)の定例記者会見で「米国から飛来した特殊廃棄物がタマウリパス州に落下し、一部地域を汚染したとの報告を受けた」と述べ、「国境付近でのロケット発射に伴うこうした事態について、国際法の枠組みの中で(スペースXを)提訴する可能性を検討している」と語った。
1972年に米国とメキシコが署名した「宇宙損害責任条約(Liability Convention)」によれば、打ち上げ国は地球表面で発生した損害について無過失責任(strict liability)を負うとされている。
例えば、ソ連がカナダに約300万カナダドル(約3億1,783万円)の損害賠償金を支払った事例がある。これは1978年、核反応炉を内蔵したソ連の偵察衛星「コスモス954号」が地球大気圏に再突入し、カナダ北部の領土に破片と放射性物質を散布したためだ。この事例は、宇宙探査の歴史上、ある主権国家が宇宙物体の落下による被害を理由に他の主権国家に対して損害賠償を請求した初のケースとなった。

一方、18日の夜、米テキサス州ボカチカにあるスペースXのロケット発射場「スターベース」で、スターシップのロケットが地上でのエンジン燃焼試験中に爆発した。メキシコ当局は、残骸がスターベースから直線距離で3~5km離れたメキシコのリオ・ブラーボ川(米国名:リオ・グランデ川)周辺に落下したと確認した。
当時、米国との国境に位置するマタモロス市では「空がオレンジ色に変わり、家の中で強い揺れを感じた」との住民証言が相次いだと、メキシコ北東部地域のメディア「エル・ソル・デ・タンピコ(El Sol de Tampico)」が報じた。
シェインバウム大統領は「タマウリパス州の一部地域に現在、関連警報が発令されており、州政府から住民に対し残骸への不用意な接近を控えるよう指示が出ている」と述べ、「この事件を機に、両国国境地帯でのロケット発射に関する安全性の問題や環境への影響を総合的に調査している」と強調した。
スペースXはイーロン・マスクCEOが創業した米国の宇宙探査企業だ。スターシップは同社が火星探査を目指して開発中の大型宇宙船である。先月の27日には、スターシップの9回目となる飛行試験が失敗している。
注目の記事