
米上院が来年度の国防権限法案に、在韓米軍の削減時に議会の承認を求める条項を追加した。これはトランプ政権1期目に続き2期目でも在韓米軍削減の可能性が浮上する中、トランプ政権を事前に牽制する措置とみられる。
米上院軍事委員会は11日(現地時間)、ウェブサイトで2026会計年度(2025年10月~2026年9月)米国防権限法案(NDAA)の概要を公開した。NDAAは米国防総省の予算支出と政策を承認する年次法案だ。米議会は同法案を審議する際、上下両院でそれぞれ草案を作成した後、単一案にまとめて最終決定する。上院軍事委員会は11日、上院草案を採決に付し、賛成26票、反対1票で可決した。
上院草案には昨年のバイデン前政権下では見られなかった内容が追加された。法案には在韓米軍削減について「朝鮮半島における米軍の態勢縮小や在韓米軍司令部に対する戦時作戦統制権の移譲が国益に合致すると国防長官が議会に保証するまで、そのような措置を禁止する」という項目が含まれている。
また、上院は草案で米統合参謀本部議長とインド太平洋軍司令官、在韓米軍司令官に対し、在韓米軍の削減や戦時作戦統制権の移譲に伴うリスクについて独立した評価を行うよう求めている。
昨年のバイデン前政権下のNDAAには、在韓米軍の削減に関する特別な制約条項はなかった。代わりに米国がインド太平洋地域で同盟国やパートナー国との関係強化に努めるべきだという文言が盛り込まれていた。その努力には「韓国に配備された約2万8,500人の米軍規模を維持し、相互防衛協力を強化し、米国の全ての防衛能力を活用して拡大抑止を提供するという約束を再確認することを含む、韓国との同盟強化」が含まれていた。
今回の概要では具体的な在韓米軍の維持規模には言及されていない。ただし、今回公開された内容はトランプ政権1期目の法案に類似している。当時、米議会はトランプ政権1期目が在韓米軍を削減できないよう牽制するため、2019~2021会計年度のNDAAに在韓米軍の維持規模を明記し、NDAA予算を在韓米軍の削減に使用できないよう規定した。
ただし当時は、国防長官が在韓米軍の削減が米国の国益に合致し、地域の米同盟国の安全保障を著しく損なわず、韓国・日本と適切に協議した事実を議会に保証すれば、在韓米軍を削減できるという条件付き条項が付されていた。
在韓米軍削減の最大の歯止めになっていた予算使用禁止条項は、韓米同盟を重視したジョー・バイデン前大統領の就任以降、在韓米軍削減の可能性が低下したため、NDAAから削除された。
これに先立ち、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は5月、関係者の話として、トランプ政権2期目が在韓米軍4,500人を韓国から撤退させ、米領グアムを含むインド太平洋地域内の他地域へ移転する案を検討中だと報じた。 米国のドナルド・トランプ大統領は8日、ホワイトハウスでの閣議で在韓米軍の防衛費分担金に言及し、「韓国は年間100億ドル(約1兆4,728億円)を支払うべきだ」と主張した。さらに在韓米軍駐留は「米国にとって損失だ」と述べた。
米議会ではトランプ大統領の在韓米軍削減主張について意見が分かれている。共和党のロジャー・ウィッカー上院議員(ミシシッピ州選出、上院軍事委員会委員長)と民主党のジャック・リード上院議員(ロードアイランド州選出、上院軍事委員会筆頭理事)は、4月10日の上院軍事委員会のNDAA公聴会で在韓米軍削減に否定的な反応を示した。
ウィッカー議員は「国防総省の一部の中間管理職が米本土に対する中国の脅威に集中するため在韓米軍削減を検討しているという報道がある」と述べ、軍関係者を追及した。リード議員も「韓国と日本は米軍の防衛費分担と駐留に大きく貢献している」とし、両国に駐留する米軍の削減を懸念すると述べた。

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