
2025年7月13日以降、シリア南部スウェイダ地域でベドウィン族とドルーズ族の武力衝突が激化し、少なくとも数十人が死亡したと報じられる。発端は北部で起きた誘拐事件で、当初合意された身代金交渉が崩壊したことで火種が拡大し、激しい銃撃戦が現在も続いている。

事態悪化の中でシリア政府軍が現地に介入し、一部のドルーズ民兵が政府軍に向けて反撃を開始したため、戦線は複雑に入り組んだ。政府軍は鎮圧を名目に装甲車と重火器を投入したが、民間人地域への砲撃が報告され、住民の怒りと不安が増幅した。

暴力が広がると、ダマスカス当局はスウェイダ全域に外出禁止令と移動制限を発令した。しかし夜間にも銃声と爆発が途絶えず、ドルーズ武装勢力と政府軍の小競り合いが散発的に続き、戒厳令はほぼ効力を失った。

イスラエルは「同胞ドルーズを守る防衛行動」と主張し、スウェイダ周辺の政府軍拠点やダマスカス軍司令部に空爆を実施した。戦車・装甲車両が炎上し、爆風は近隣住民にも被害を与えた。シリア政府は主権侵害だと非難し、「報復の権利」を示唆した。

シリア人権監視団(SOHR)は紛争と空爆を合わせた死者が200人を超えたと集計した。内訳はドルーズ民兵、シリア軍兵士、ベドウィン族戦闘員、そして多数の民間人で、政府軍によるドルーズ住民の扱いを巡り人道的批判が高まる。

イスラエル国内の一部ドルーズ青年は「兄弟支援」を掲げ国境障壁を越えてスウェイダへ向かった。イスラエル軍は初動で大規模な制止を行わず、一部渡河を黙認したと現地メディアは伝える。彼らは「政府軍ではなくドルーズ民兵を援護する」と主張し、戦闘を長期化させる要因になった。

7月15日、シリア政府とドルーズ族長の間で暫定停戦が宣言されたが、数時間後には再び銃撃が再開された。イスラエルはこれを受けて「防衛的空爆」を継続すると通告し、ダマスカスの軍事施設への追加攻撃も示唆したため、停戦の実効性は事実上崩壊した。

反イスラム過激主義を掲げる新政権の下で宗派間対立が広がる中、国連は包括的対話と即時停戦を呼びかけ、米国はイスラエルに空爆自制と政治的解決を圧力として加えている。それでも隣国民兵の越境、空爆、国際的非難が絡み合う複合危機は中東の火薬庫を再点火させ、地域安定のための協調と社会統合戦略の緊急性を浮き彫りにしている。
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