
トランプ政権2期目の「関税戦争」により、米国の平均有効関税率が今年初めの2.5%から、わずか7カ月で18.3%にまで跳ね上がる見通しだとされている。これは1934年以来、約91年ぶりの高水準に当たるという。ロイター通信やAP通信によると、イェール大学予算研究所(TBL)の分析をもとに報じられた。
分析では、7日から適用される各国の報復関税の影響まで含めて評価が行われたという。関税引き上げのブーメラン効果でインフレ圧力が再び強まり、最も大きな影響を受けるのは米国の消費者だという見方も出ている。
TBLが公式サイトで公開した分析によると、今年に入ってからのドナルド・トランプ米大統領の関税政策により、米国の物価は短期的に1.8%程度上昇する可能性があるとされており、これは1世帯あたり年間2,400ドル(約35万4,542円)の所得が失われるのと同等の影響だという。
特に衣料品価格の上昇が顕著になると予測されている。米国内で販売される衣料品や靴の97%が輸入品であり、主な供給元は中国、ベトナム、インドネシア、インドとのこと。TBLによると、靴と衣料品の価格は短期的にはそれぞれ40%、38%上昇し、長期的にも19%、17%程度高い水準が続く可能性があるという。
また、関税の影響で実質国内総生産(GDP)成長率は今年と来年にそれぞれ0.5ポイント低下し、その後も毎年0.4ポイントずつ減少し続ける可能性があると見込まれている。これを金額に換算すると、年あたり1,200億ドル(約17兆7,304億6,500万円)規模のGDPが失われる計算になる。
トランプ大統領は関税について「外国に課す税金」との認識を示しているが、実際には米国の輸入業者が支払い、そのコストは最終的に価格引き上げを通じて消費者にのしかかると、AP通信は指摘している。
実際、ウォルマートやP&G、フォード、ベストバイ、アディダス、ナイキ、マテル、スタンレー・ブラック・アンド・デッカーといった企業が、すでに値上げを実施しているという。
ニューヨーク法科大学院のバリー・アップルトン国際法センター共同所長は、「関税は消費税の一種であり、低所得層ほど打撃が大きい」としたうえで、「スニーカー、バックパック、テレビ、ビデオゲーム機の価格も上がることが予想される」と語った。また、「米国内で生産されていない製品が多いため、結局は誰も勝者にはならず、全員が損をする結果になるのではないか」との見方も示している。
さらに、元米通商当局者で世界貿易機関(WTO)の副事務局長も務めたアラン・ウルフ・ピーターソン国際経済研究所上級研究員は、「最大の勝者はトランプ大統領かもしれないが、最大の敗者は米国の消費者だ」と述べているという。
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