ドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナ戦争終結問題を巡り、アラスカで首脳会談を行うことが決定した。トランプ第2期政権の発足以降、両大統領は今年に入って6回の電話会談を実施しているが、対面での会合は今回が初めてとなる。この会談次第では、3年以上続くウクライナ戦争に大きな転換点が訪れる可能性がある。ただし、この過程で戦争当事国であるウクライナは除外されることとなった。トランプ大統領は自らを「仲介者」と名乗り、ノーベル平和賞獲得を狙っているため、米国がロシアに有利な条件を受け入れる可能性も指摘されている。

プーチン、10年ぶりの訪米…ウクライナ除外
トランプ大統領は8日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「プーチン大統領との会談が15日に雄大なアラスカ州で行われる」と述べ、「詳細は追って公表する」と明かした。
ロシアの国営タス通信も、クレムリンがトランプ大統領とプーチン大統領のアラスカでの会合を確認したと報じた。今回の首脳会談が実現すれば、プーチン大統領は2015年に国連総会出席のために訪米し、当時のバラク・オバマ米大統領と会談して以来、10年ぶりに米国の地を踏むことになる。
米ロ首脳会談の議論は、今月6日に米大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏がロシアでプーチン大統領と会談したことを契機に本格化した。会談直後、トランプ大統領はSNSで「非常に生産的で大きな進展があった」と述べた。
当初、トランプ政権は米ロ首脳会談後、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領を交えた3者会談を期待していたが、ロシア側がこれを拒否したとされる。戦争当事国であるウクライナが排除されたことを受け、ゼレンスキー大統領は9日の映像演説で「ウクライナ抜きの決定は死んだ決定だ」と批判した。
欧州も、ウクライナが終戦協議に必ず参加すべきだとの見解を示した。この日夜、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、フィンランドの首脳と欧州連合(EU)委員長は共同声明を発表し、「当事国抜きでウクライナの平和への道筋を決めることはできない」と強調した。また、「ウクライナは武力による国境変更を認めないという原則を依然として堅持しており、現状の前線が交渉の出発点となるべきだ」とも述べた。
ロシア、米にドンバス要求
今回の会談の核心的争点は領土問題である。プーチン大統領は、2014年に強制併合したクリミア半島とドンバス地域をロシア領に編入しない限り、休戦に応じないとの方針を堅持してきた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、プーチン大統領はウィトコフ氏に対し「ウクライナがドンバスの領土を譲渡し、その事実が国際的に認められれば休戦する」との意向を示し、ウクライナ軍のドネツクからの撤退を前提条件として掲げたという。ウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州を含むドンバス地域は、親ロシア的傾向が強い。ロシアは、ドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンなど、東部4州を中心にウクライナ領土の約20%を占領している。
一方、ウクライナ及び欧州は、領土譲渡を条件とする休戦協議を強く拒否している。トランプ大統領はこの日、ホワイトハウスで行われた記者会見で領土問題について「一部は返還され、一部は交換されるだろう」と述べた。これは、ロシアが提案するドンバス譲渡を受け入れる一方で、ザポリージャとヘルソンの支配権はウクライナに返還するという案を示唆しているのではないかという分析がある。
海外メディアは、今回の会談場所がアラスカに決定したことについて、1867年にロシアが米国に売却した領土という象徴性に注目している。CNNは「ロシアが720万ドル(約10億6,300万円)で米国に売却したアラスカは、プーチン大統領が占領できなかった領土の一部をキーウ(ウクライナ首都)に譲渡させる『世紀の領土取引』を試みる場所となるだろう」と評した。
「ロシアの会談は時間稼ぎ」
一部では、今回の会談でプーチン大統領がすでに「1勝」を収めたとの見方も出ている。ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「ウクライナ侵攻以降、国際社会から孤立していたプーチン大統領と米大統領が会談する意思を示したという事実だけでも、クレムリンにとっては外交的勝利だ」と評価した。
また、ロシアの首脳会談参加は、トランプ政権の関税圧力を回避するための戦略的行動に過ぎないという見方もある。WSJは「欧州は、この提案がロシアが実質的に戦闘を中止する以外に大きな譲歩を示さない構造だと懸念しており、米国の新たな制裁を回避するための『時間稼ぎ』ではないかという疑念もある」と報じた。トランプ大統領は、休戦交渉に消極的なロシアに対し、休戦に同意しなければロシアと貿易を行う国に2次関税を課すと警告している。
注目の記事