
11日(現地時間)、ドナルド・トランプ米大統領は、首都ワシントンDCの治安改善を目的に、地域警察の管理権を掌握し、州兵を投入すると発表した。計画は米議会にも通知された。
報道によると、ワシントンDC市長は連邦政府による警察権接収計画の事前通知がなかったことに不満を表明した。政界では民主党を中心に批判の声が上がる一方、警察組合や共和党からは支持の意見も出ている。
『AP通信』によれば、トランプ大統領は同日、下院監督委員会に対し、ワシントンDC自治権法第740条の発動と連邦政府による管理計画を通知した。
トランプ大統領は書簡で、今回の措置は「政府所在地の治安維持、連邦施設や国家記念物などの保護、連邦政府機能の円滑な遂行に必要な条件の確保」を目的とすると主張した。
この措置により、トランプ大統領は48時間以内にワシントンDC警察局を連邦政府の管理下に置くことが可能となり、その期間は30日間の暫定措置となる。
ワシントンDC警察局を30日以上連邦政府が管理するには、米議会上下両院の投票による承認が必要となる。同日午前のホワイトハウス記者会見で、トランプ大統領は「ワシントンDC警察局をパム法務長官が管理し、州兵800人と連邦要員500人を治安維持業務に投入する」と発表した。治安状況が制御不能な水準まで悪化しており、抜本的な対策の必要性を強調した。
これに対し、ワシントンDC市長ミューリエル・バウザー氏は同日午後の記者会見で「ポストコロナ期に犯罪率は急増したが、2023年をピークに減少し、2019年を下回った。現在は過去30年で最も低い暴力犯罪率となっている」と反論した。
また、バウザー市長は警察局管理権接収計画の事前通知がなかったことに不満を示し、「不安を感じる措置だ」と述べた。ただし、法に基づく措置として批判は抑えた。
一方、ハキーム・ジェフリーズ民主党下院院内総務は声明で「権力を独占しようとする者が、私的・政治的目的のために法律を破壊し、憲法を継続的に侵害している」と批判した。
特に2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件に言及し、「トランプは公共の安全に無関心であり、就任初日に1月6日に法執行官を攻撃した数百人の重罪犯を恩赦した」と指摘した。
さらに「我々はワシントンDC市民と共に、この不当な権力掌握を違法とみなし、拒否する」と述べた。
『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』によれば、一部の民主党議員はトランプ大統領の措置を無効化し、市の警察権を回復する法案の提出を計画している。市民社会からは、この動きが権威主義体制への前兆との見方も出ている。
非政府組織(NGO)ヒューマン・ライツ・ウォッチは声明で「危険かつ不当な措置だ」とし、「世界各国で見られるように、地域の法執行機関を軍が掌握することは権威主義の兆候だ」と指摘した。
注目の記事