
スイスの時計業界が米国の関税攻勢に揺れる中、代表ブランドであるスウォッチ(Swatch)の時代錯誤的な広告がアジアの消費者の怒りを買っている。
17日、香港紙のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、スウォッチが最近発売した「ESSENTIALS」コレクションの広告において、東洋人男性モデルが「つり目」のジェスチャーをする写真を使用したという。このジェスチャーは典型的な人種差別的な行為とみなされている。
これを受け、アジア圏、特に中国の消費者から強い反発が起きた。中国のSNSであるウェイボー(Weibo)では「アジア系への差別であり、中国人を侮辱している」、「ひどすぎる」といった非難の声が相次いだ。
輸出主導型国家であるスイスにとって、時計は主要な外貨獲得品目の一つである。しかし、最近、米国のドナルド・トランプ大統領がスイスに対して39%の相互関税を課すと発表したことで、スイスの時計メーカーは危機感を募らせている。昨年、スイスの時計輸出の16.8%(約5,694億7,008万円)を占めた米国市場が、関税の影響で縮小すれば、大幅な売上減少が懸念される。
活路を見出すのは中国などアジア市場である。スイス時計協会(FHS)の統計によれば、中国は2020年代に入ってからスイス時計の最大の単一輸出国になったという。消費低迷や反腐敗キャンペーン、高級品消費規制などの影響で一時は売上が大幅に減少し収益性も急落したが、中国市場は依然としてスイス時計の売上を支える柱になっている。
特に中国の地方都市においても高級品消費の需要が増加しており、スイスブランドにとって中国は今後10〜20年の成長の要となる。先月、スウォッチは中国内の電子商取引の回復や小売業者の在庫減少などの好材料を挙げ、下半期からの回復が期待できると述べた。

しかし、スウォッチは不適切な人種差別的広告によって自滅し、中国内の消費動向に悪影響を及ぼす結果となった。論争を受け、スウォッチは16日にインスタグラムと中国のSNSウェイボーに投稿した声明で「関連する懸念を認識している」とし、「この問題を非常に重視しており、関連する広告画像を世界中から直ちに削除した」と明らかにした。さらに「今回の件で不快感や誤解を与えてしまったとすれば、心からお詫び申し上げる」と付け加えた。
なお、欧米ブランドによる人種差別的な広告を巡る論争は今回が初めてではない。フランスの高級ブランド「ディオール(Dior)」も2023年4月に東洋人女性モデルの「つり目」を用いた広告で批判を浴びている。
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