ウクライナ安全保障国に中国浮上も…「ロシアの期待に反し実現可能性は低い」
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト報道「中国は外交・政治的な保証人の役割にとどまる」
香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は22日、中国がウクライナの集団的安全保障の保証国として取り沙汰されているものの、その可能性は低いと報じた。

SCMPは専門家の分析を引用し、「中国は政治的または外交的な支援は提供できるが、ウクライナに対し集団的安全保障を保証するための資源やインセンティブに欠ける」と指摘した。
こうした論評は、16日のドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチン露大統領の会談、さらに18日のウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領と欧州連合(EU)首脳による米国での首脳会談を経て、ロシアが中国の参加を希望していることへの反応として注目される。
米国・ウクライナ・EUの首脳会談を機に、安全保障策を協議する三者委員会が発足したが、ロシアは自国を排除した議論を拒否するとともに、中国の参加を強く求めていると伝えられる。
実際、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は20日、「ロシア抜きの議論は空想であり無意味だ。中国、米国、英国、フランスといった国々が参加し、ウクライナへの安全保障が平等な基盤で提供される場合にのみ受け入れる」と述べた。
ロシアはまた、2022年の協議内容として、ウクライナが永世中立を受け入れる代わりに、国連安全保障理事会常任理事国(英・中・仏・露・米)からの安全保障を得ることを盛り込むべきだと主張している。
これに対しゼレンスキー大統領は21日、「ウクライナが必要な時に支援をしない保証国は必要ない」と述べ、中国を牽制した。
中国シンクタンク「ホライゾン・インサイト・センター」のジュ・ジュンウェイ所長は、「中国がウクライナ安全保障において主要な役割を担うことはない」との見方を示した上で、「新たな安全保障策は1994年の『ブダペスト覚書』の非効率性を避け、実効的な手段を検討すべきだ」と指摘した。
旧ソ連崩壊後の1994年、ウクライナはベラルーシ、カザフスタンとともにハンガリー・ブダペストでロシア、米国、英国と一連の協定を締結した。主権と領土保全の尊重、武力行使や威嚇を受けないとの安全保障を得る代わりに、保有していた核兵器を放棄した。

しかし、2014年のロシアによるクリミア半島併合、さらに2022年2月のウクライナ侵攻で、ブダペスト安全保障覚書は事実上無効化した。
SCMPによれば、中国は1994年ブダペスト覚書の署名国ではなかったが、後に「非核兵器国に対し核兵器の使用や威嚇を行わない」とする政府声明を発表し、覚書を支持していた。
ジュ所長は「当時、中国はNPT(核拡散防止条約)の5大核保有国として決定したが、現在のウクライナ集団安全保障の枠組みは性質が異なる。中国が西側諸国とともに安全保障に加わる可能性は低い」との見解を示した。
また、中国清華大学の国際安全保障戦略センター(CISS)のソン・ボー研究員は「ロシアと米国がウクライナ問題に中国を巻き込もうとしているのは、新興大国への依存を示すものだ」とした上で、「中国が保証国となれば軍の派遣や多国間協力枠組みへの参加が求められるが、資源や技術的な観点から中国が応じるのは難しい」と分析した。
ソン研究員はさらに「中国は安全保障の保証よりも、外交的・政治的な宣言に関する保証人の役割にとどまるべきだ」と付け加えた。
中国人民大学のジン・チャンロン教授も「中国は欧州の紛争に関心を持っておらず、ウクライナ問題への直接関与には慎重な立場を取るだろう」と指摘している。
中国外交部のマオ・ニン報道官も18日、中国がウクライナ安全保障国となる意向があるかの質問に対し「中国は独自の方法で対話と仲介を推進し、政治的解決を模索する」と述べ、保証国となる意思は示さなかった。

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