
米『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は現地時間25日、ソ連が1976年に開発した旧型プロペラ練習機のヤク-52(Yak-52)が、ウクライナ軍がロシアのドローン攻撃を阻止するのに大きな役割を果たしていると報じた。
海外メディア『ニューシス』の報道によれば、ウクライナ第11独立陸軍航空旅団に所属する56歳の操縦士と38歳の射手が、過去1年間に同部隊が撃墜したロシアのドローン120機の半数を撃墜したという。
この2人はヤク-52に搭乗し、キャノピーを開けたまま銃を構えてロシアのドローンを撃墜する。1年間で出撃した回数は300回。出撃命令を受けてから15分以内に飛び立つ。
ウクライナは、パトリオットミサイルなどの最新鋭防空システムを有しており、F-16戦闘機でロシア軍のミサイルやドローンを撃墜している。
一方で、ドローンに対しては低コストの防衛策も多様に導入してきた。電波妨害や道路上に設置されたネット、ピックアップトラックに搭載した対空砲の使用などがその代表例。中古のコンテナに旧ソ連製対空ミサイルを設置したものもその一例だ。
低コストのドローン迎撃で特に成果を上げているのがヤク-52。2人乗りのヤク-52練習機は最高速度285km/hで、最高速度190km/hのロシアのドローンよりもはるかに速い。
パイロットが操縦席からロシアのドローンを追尾。後部座席に乗っている射手がキャノピーを開けて身を乗り出し、ショットガンや機関銃でドローンを撃墜する。
ヤク-52はレーダーを搭載していないため、昼間のみ飛行が可能だ。冬期の厳しい寒さの中では、乗員は厚手のジャケットと手袋、毛皮付きヘルメットを着用する。その姿は、第一次・第二次世界大戦時の戦闘機パイロットを彷彿とさせる。彼らは、ロシアのドローンから60~90mの距離まで接近して攻撃を仕掛ける。
ヤク-52迎撃チームが標的としているのは、ロシアのオルラン、監視しドローンのザラ、および自爆ドローンのシャヘドだ。オルランは小型飛行機、ザラは凧のような形状、シャヘドは三角形のフォルムを持っている。
ウクライナ軍がヤク-52やヘリコプターで空中から直接撃墜するロシアのドローンは、全体の約10分の1に過ぎない。ロシアが発射したドローンのうち、ウクライナの防空網を突破できたのは約11%に留まっている。ヤク-52はヘリコプターよりも速いため、より前線に接近することが可能だ。
空中での迎撃に対抗するため、ロシアはオルランの後部にカメラを装着している。これは、ヤク-52の接近を検知した際に回避機動を行うためだ。
それでも効果が限られていたため、ロシア軍は今年7月、ヤク-52を運用するウクライナ第11航空旅団の格納庫を弾道ミサイルで攻撃し、破壊した。
これに対し、ウクライナ軍はヤク-52を新たに再投入し、運用を継続している。
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