トランプの科学不信と攻撃、過去の独裁者の戦術と酷似とNYTが指摘
ヒトラーやスターリンの基礎科学軽視・応用科学偏重と類似
自身を超える大衆の信頼を懸念…米国に新たな不確実性の時代

基礎科学の成果を軽視し、科学者集団をあからさまに攻撃するトランプ米大統領の姿勢は、かつて多くの独裁者が用いた科学弾圧の手法と酷似しているとの分析が示された。
31日(現地時間)、米紙『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』は、権威主義者が科学を競争相手とみなし抑圧してきた歴史に言及し、トランプ氏が2期目に入って強めている科学界への締め付けについて報じた。
トランプ氏の「科学不信論」はこれまでも繰り返し明らかになってきた。2016年、ウィスコンシン州ラクロスでの選挙集会では「専門家はひどい。専門家のせいで我々がどれほど混乱しているか見てみろ」と公然と批判している。科学界に対する抑圧的な政策は前政権でも推し進められていたが、2期目に入ったトランプ氏は、以前にも増して迅速に科学界への締め付けを強化し始めた。
2月には各種諮問委員会の廃止や規模縮小を盛り込んだ行政命令に署名。ワクチン、天体物理学、宇宙、環境といった幅広い分野の諮問活動に影響が及んだ。さらに5月には、基礎研究予算を450億ドル(約6兆6,000億円)から300億ドル(約4兆4,000億円)に削減する次年度の連邦科学予算案を発表した。
人事でも科学界との対立を鮮明にしている。トランプ氏は突然、疾病対策センター(CDC)のスーザン・モナレズ長官を解任。その後任に、ベンチャー投資家出身のジム・オニール保健福祉省副長官を指名した。この人事は、トランプ氏の科学界に対する不信感を象徴する出来事と受け止められている。
モナレズ氏側の弁護士は声明で、こうした措置を「科学の危険な政治化」と厳しく批判した。
専門家らは、トランプ米大統領による科学界への攻撃が、過去の独裁者たちが採ってきた偏った科学政策と類似していると指摘している。
ドイツのアドルフ・ヒトラーは、科学分野においても「民族主義」を前面に掲げ、数百人のユダヤ人科学者を解雇する一方、軍事強化のためロケットやジェットエンジンの開発に注力した。ソ連の独裁者ヨシフ・スターリンも数千人の科学者を銃殺し、奴隷労働を強いたが、応用科学には資金を投入し、原子爆弾の開発や世界初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げを実現させている。
『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』は、トランプ大統領もシリコンバレーの専門家たちは称賛するものの、自由な思考を基盤とし、ノーベル賞受賞だけでなく数兆ドル規模の産業を育成する基礎研究を損なっていると指摘した。
専門家らはまた、権威主義的な統治者やその追随者が科学を恐れる理由についても言及。宇宙の解明や感染症の収束、数百万人の命を救うといった偉業は、政権への信頼を超える新たな大衆的信頼の連帯を生み出す可能性があるためだと分析している。
『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』さらに、トランプ氏の科学に対する不信と攻撃の実質的な影響が明らかになるのは、任期終了後になるだろうと報じた。大半の科学プロジェクトは成果が出るまで数年から数十年を要するためで、米国は「新たな不確実性の時代」を迎えることになると結んでいる。
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