
アメリカ海軍特殊部隊のネイビーシールズが2019年の米朝首脳ハノイ会談直前、北朝鮮に盗聴装置を仕掛ける秘密作戦中に北朝鮮の民間人複数を射殺したと、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。
同紙は5日(現地時間)、「How a Top Secret SEAL Team 6 Mission Into North Korea Fell Apart(北朝鮮に潜入したネイビーシールズ第6チームの極秘作戦はいかに崩壊したか)」と題した記事で、こう報じた。
この極秘作戦は、金正恩委員長との2019年2月19日のハノイ会談を数週間後に控え、彼の意図を探るため通信を傍受する装置を設置する目的で実施された。トランプ大統領の最終承認を得て行われたという。
作戦に参加したネイビーシールズ第6チームは、かつてアフガニスタン戦争でウサーマ・ビン・ラーディン氏を捕捉したチームだ。
ニューヨーク・タイムズによると、2019年初頭、ネイビーシールズ第6チームは 原子力潜水艦で北朝鮮領海に接近後、半潜水艇2隻に8人の隊員が移乗し、約2時間かけて海岸線に侵入した。
隊員らは北朝鮮の海岸線付近で小型船舶と遭遇すると、北朝鮮警備隊に発見されたと判断し発砲した。しかし、後の調査でその船は貝類を採取していた漁船だった可能性が高いと評価された。
ネイビーシールズは、その船にいた漁民全員を射殺した。射殺された北朝鮮民間人の正確な数は明らかにされていない。
隊員らは痕跡を隠すため、漁民の肺を刺して遺体を沈めたという。そのため、北朝鮮もこの事件の全容を今も把握していない可能性がある。もし当時発覚していれば、北朝鮮による報復的なアメリカ軍人質事件や、米朝間の全面衝突に発展した可能性もある。
アメリカ軍特殊部隊員らは予期せぬ事態に直面し、急遽作戦を中止して全員撤退した。その後、アメリカ国防総省は作戦遂行過程を検証し、該当の民間人射殺は交戦規則上正当だったと結論付けた。この極秘作戦は米議会情報委員会にさえ報告されておらず、法的手続き違反だとの論争を呼んでいる。
2019年の米朝首脳ハノイ会談は決裂し、北朝鮮はその後、核・ミサイル能力をさらに強化した。
ニューヨーク・タイムズは、ネイビーシールズの極秘作戦失敗の原因として、衛星写真のみに基づく不完全な情報、潜水艇の些細なミス、漁船の偶然の出現、情報不足の中での生死を分ける判断を挙げた。
さらに、実際の戦場で起こり得る「小さな偶然」がいかに世界秩序を揺るがしかねなかったかを如実に示していると指摘し、この事件はアメリカ特殊作戦の光と影を同時に露呈していると述べた。
また、表向きは交渉相手として振る舞いながら、実際には核武装した敵国を刺激しかねない秘密侵入作戦を承認したワシントンの矛盾した態度を示したと分析した。
ニューヨーク・タイムズの報道に対し、ホワイトハウス、アメリカ国防総省、在韓米国大使館はコメントを控えた。
一方、アメリカ軍特殊部隊の北朝鮮侵入作戦自体ではなく、その過程で起きた非武装民間人の射殺が問題視されている。
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