
米連邦最高裁判所は8日(現地時間)、トランプ政権下で移民当局が人種や言語を理由に行っていた不法移民の取り締まりを違法とした下級審の判断を覆した。
米『CNN』や『ワシントン・ポスト(WP)』などによれば、最高裁は8日(現地時間)、移民・関税執行局(ICE)が「人種」、「スペイン語の使用」、「特定地域の居住」、「職業」といった要素のみを根拠に不法滞在者の取り締まりを行うことを禁じた1・2審の命令を差し止めた。命令の対象地域は、ロサンゼルスを含むカリフォルニア州南部の7郡だった。
ロサンゼルス連邦地裁のマーム・フリンポング判事は7月、人種や言語といった一部の要素だけを根拠とした無差別な取り締まりは、憲法修正第4条に違反する可能性があるとして中止を命じていた。先月には第9巡回区控訴裁判所もこの判断を支持したが、最高裁で覆された形だ。
判事の意見は6対3に分かれ、多数意見を示したブレット・カバノー判事は「外見上の民族性だけでは合理的な疑いとはならない」としつつも、「言語や居住地、職業といった要素と組み合わせれば不法滞在の疑いを構成し得る」と指摘。そのうえで、ICEの取り締まりは違憲には当たらないと結論づけた。
一方、反対意見を述べたソニア・ソトマヨール判事は「ラテン系に見え、スペイン語を話し、低賃金で働いているように見える人々を政府が逮捕する国に、私たちは住むべきではない。憲法で保障された自由が失われていくのを黙って見過ごすことはできない」と強く批判した。
トランプ政権は今回の最高裁判断を歓迎した。
アビゲイル・ジャクソン・ホワイトハウス副報道官は「下級審の判事たちが、大統領による米国民の意思の合法的な遂行を妨害していた事実が改めて明らかになった」と強調。トランプ政権は今後も不法滞在の外国人犯罪者の逮捕と国外追放を続けていくと表明した。
米国土安全保障省のトリシャ・マクラフリン次官補も「これはカリフォルニア州民の安全と法治主義の勝利だ」と評価し、「殺人犯、強姦犯、ギャングの構成員など犯罪を犯した不法滞在者の摘発と追放を徹底する」と述べた。
一方、民主党のギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事は「トランプが任命した最高裁多数派が、ロサンゼルスで行われる人種差別的な取り締まりの最高司令官となった」と述べ、最高裁の判断を厳しく批判した。
ニューサム知事はさらに「これは移民法の執行ではなく、ラテン系住民や、スティーブン・ミラー(ホワイトハウス副補佐官)が考える『典型的なアメリカ人』とは異なる外見や声を持つ人々を標的にするものだ。トランプの『私兵』が、今や皆さんの家族を狙う許可を得た」と批判し、「我々は戦い続ける」と強調した。
カレン・バス・ロサンゼルス市長(民主党)も「最高裁は、覆面をした連邦捜査官がLA市民を人種差別的にプロファイリングし、証拠や令状なしに拘束できると判断した」と指摘。個人の自由の基盤を揺るがす決定だとして、最高裁を厳しく非難した。
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