マグラV5の技術移転・共同生産を検討…年内合意の可能性も
中国「地域の安定に貢献すべき」と不快感示す

ウクライナがロシア黒海艦隊との戦闘で実戦効果を示した海上ドローン「マグラ」のフィリピン供与に向けた協議が進んでいる。軍事専門誌アーミー・レコグニションは9日(現地時間)、両国が年内の協定締結を目標に、技術移転や共同生産の可能性を協議していると報じた。
マグラV5、「小型無人艇が戦艦を撃破」

マグラV5は全長5.5メートル、幅1.5メートルで最大320キロの爆薬を搭載可能だという。最高速度は時速約78キロ、作戦半径は800キロ、最大60時間の航行が可能とされる。価格は約27万ドル(約3,981万2,622円)で、大型艦艇に比べてはるかに低コストである。ウクライナはマグラV5を投入し、ロシアの哨戒艦「セルゲイ・コトフ」を撃沈、さらにブーヤン型小型護衛艦(コルベット)への攻撃にも使用した。
アーミー・レコグニションは「フィリピンがマグラを導入すれば潜水艦戦力の空白を補い、南シナ海での中国海軍の数的優位を弱体化させることができる」とし、非対称的な抑止戦略の中核資産になると分析した。
フィリピンとの交渉の進展状況

海軍専門メディア「ネイバルニュース」によると、両国は10月までに防衛協力に関する覚書(MoU)締結を目指しており、ウクライナ国防省代表団が近くマニラを訪問する予定だという。駐フィリピンのウクライナ大使ユーリヤ・ペディウフ氏は「第一段階として法的枠組みを定める協定の署名を行い、その後に共同生産へ拡大していく」と語った。
また、フィリピン紙「インクワイアラー」は8日、国防省がすでに草案を受け取り、来月ザンバレス州で開かれる「ドローン・ウォーフェア・サミット」にウクライナが参加し、協議を加速させる可能性があると伝えた。インクワイアラーによれば、ギルベルト・テオドロ国防相が駐フィリピン(非常駐)ウクライナ国防駐在官と面会し、年内合意の見通しを確認したという。
中国「協力は地域の安定に寄与すべき」
同日、中国も反応を示し、国営メディア「環球時報」は、中国外務省の林剣報道官は「国家間の協力は地域の平和と安定の促進に資するべきだ」と発言したと伝えた。

中国は直接的な非難は避けたものの、不快感を隠さなかったとされる。外交筋の間では、中国が今後この協定を南シナ海問題と絡めて牽制材料に使う可能性が指摘されている。
東南アジア初のパートナーシップ、戦略的影響
今回の協定は、ウクライナにとって東南アジア初の防衛産業パートナーシップとなり、無人艇技術輸出の橋頭堡となる見通しだ。一方で、フィリピンは米国依存から脱却し調達先の多様化を進める契機となる。ただし、中国の牽制やフィリピンの財政・産業面での制約により、実際の履行は遅れる可能性もある。
軍事専門家のHIサットン氏は「2022年に漁船改造の試作機から始まったマグラは、今や戦闘機をも撃墜できるプラットフォームへ進化した」と述べ、「小型ドローンボートが海軍の歴史を変えつつある」と評した。
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