攻撃用・おとりドローン3万4,000機以上投入…昨年の9倍に
ドローン年間生産能力3万機、来年は6万機見込む…「民間工場から高校生まで生産に参加」
ウクライナとロシアのドローン戦力差は徐々に縮小

ロシアが発射したドローン1機が13日(現地時間)、ルーマニア領空に侵入し、戦闘機が緊急発進するなど波紋が広がっている。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は14日、ウクライナ戦争が3年半を超える中でロシアのドローン生産能力が大幅に拡大し、「ロシアのドローンが空を覆っている」と報じた。
生産拡大でウクライナ防空網を飽和状態に
2022年2月のウクライナ侵攻開始時、ロシアはイランから提供された自爆型ドローンを一度に43機発射し、世界の注目を集めた。しかし今月に入り、ロシアは1夜で800機以上の自爆型ドローンや囮を国境越しに投入するなど、その規模は大幅に拡大している。
NYTによれば、ロシアは前線で使用する小型戦術ドローンの生産を急速に増強しており、地方政府や民間工場、さらには高校生まで製造に動員しているという。拡大した生産能力を背景に、ウクライナの防空網を飽和させつつ、兵器工場やエネルギー関連施設、都市部への大規模攻撃を続けている。
ウクライナもロシア本土へのドローン攻撃を仕掛けているが、ロシア側の攻撃は激しさを増し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の領土にまで及び始めている。
ポーランド政府は9日から10日にかけて少なくとも19機のロシア製ドローンが領空に侵入し、撃墜されたのはごくわずかだったと発表した。
ルーマニア国防省も13日、領空で自国戦闘機2機がロシア無人機1機を迎撃したと明らかにした。
NYTは、こうした事例はNATOがロシアの攻撃形態への対応に苦慮していることを示していると分析した。今後は個別の攻撃に数千機規模の無人機が投入される可能性があるためだという。
カーネギー国際平和基金の上級研究員マイケル・コフマン氏は「この戦争は、前線・攻撃作戦の双方でドローンの運用が新たな段階に入った」と述べた。
民間施設も攻撃、士気低下と戦争継続意志の弱体化を狙う
ロシアは攻撃用ドローンが軍事関連施設を標的としていると主張するが、実際には病院や学校、集合住宅、子どもが遊ぶ公園なども攻撃対象となり、多くのウクライナ市民が犠牲になっている。
こうした攻撃は恐怖を広げ、ウクライナ国民の士気を下げ、戦争を続ける意志を弱める狙いがあるとみられる。
NYTがウクライナ空軍のデータを基に作成した分析によると、ロシアはこれまでに3万4,000機以上の攻撃型ドローンやおとりドローンを投入しており、前年同期の約9倍に達している。
ウクライナ側は、今年ロシアが発射したドローンのうち88%を撃墜または妨害したとするが、この割合は昨年の93%から低下した。今月初めの週末には、ロシアは一晩で過去最大規模の810機が投入され、そのうち63機が突破した。うち54機が33地域の目標を攻撃したと発表した。
NYTは「ロシアのドローン攻撃急増の背景には、生産体制の革命的拡大がある」と報じた。プーチン政権はドローンを国家の優先課題に位置付け、官民の資源を総動員して「ドローン帝国」を築いたという。
ロシアは生産に学生や外国人労働者も動員し、イランや中国との関係を通じて技術や部品を確保している。
ロシアのドローン生産能力は年3万機、来年には6万機倍増の見込み
専門家は、ロシアが現在イラン製設計を基にした攻撃型ドローンを年3万機規模で生産しており、来年には倍増して6万機に達する可能性があると予測している。
ウクライナは高度な防空システムや独自のドローン技術を開発してきたが、それでもロシアの攻撃にさらされ続けている。
ウクライナ国家戦略研究所の軍事アナリスト、ミコラ・ビエリエスコフ氏は「当初は月数百件だった攻撃が、今では5,000~6,000件に達している。さらに多くのドローンが防空網を突破してくるだろう」と語った。
加えて、ロシア製ドローンは誘導精度や妨害耐性、新型弾頭の搭載など技術的にも進化している。大量に群れを成して投入されるうえ、木製や発泡スチロール製の囮も混じり、見分けが難しい。都市部では高層建築や民間人へのリスクから迎撃も困難を極める。
ウクライナ側の苦心の対応
ロシアの攻撃拡大に対し、ウクライナは撃墜手段の多様化を迫られている。防空部隊が上空で迎撃するほか、機動部隊がピックアップトラックに搭載した重機関銃で撃ち落とす例もある。電子戦による妨害も進められている。
ただし、西側から供与された高価な防空システムは主に都市や重要インフラ防衛に使われ、ミサイル迎撃が優先されている。
ロシアがドローンの飛行高度を上げると、ウクライナはレーダー搭載の安価な迎撃ドローンを導入して対応している。
コフマン研究員は「最前線でロシアがドローン分野でウクライナとの差を縮めている」と指摘した。兵力や兵器の不足を補うためドローン優位に依存してきたウクライナにとって、深刻な警鐘となっている。
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