米ジョンズ・ホプキンズ大学、ミニ脳で異常パターンを初めて解明
脳信号だけで健常者と患者を識別…精度83%
精密診断と個別化治療薬開発に貢献

アメリカの研究チームが実験室で作製した脳オルガノイド(ミニ脳)を用いて、統合失調症と双極性障害(躁うつ病)患者の脳において、神経細胞がどのように異常な動作を示すかを初めて解明した。この研究は、精神疾患の精密診断および個別化治療薬の開発に新たな道を開く可能性がある。
米ジョンズ・ホプキンズ大学生体医工学部アニー・カトゥリア教授の研究チームは「統合失調症・双極性障害患者の脳オルガノイドでは、ニューロン(神経細胞)の信号伝達パターンが健常者の脳と明確に異なることを確認した」と、国際学術誌『APLバイオエンジニアリング(APL Bioengineering)』で22日(現地時間)に発表した。
統合失調症と双極性障害は世界中で数百万人が罹患する精神疾患だが、これまで明確な原因が不明であり、診断が困難であった。患者が適切な薬を見つけるまでに、平均6~7ヶ月かかることも多い。
研究チームは、精神疾患患者と健常者の血液・皮膚細胞を幹細胞に戻して脳オルガノイドを作製。その後、人工知能(AI)アルゴリズムを用いてニューロンの電気信号パターンを分析した。実際の脳内でのニューロンは、微細な電気信号をやり取りしてコミュニケーションを取るが、研究チームはこの信号の頻度、間隔、強度など複数の指標を測定した。
その結果、健常者のオルガノイドではニューロンの電気信号が一定のパターンを示すのに対し、患者のオルガノイドでは、ニューロンが電気信号を発する時間と間隔が不規則で、複雑に入り混じっていた。このパターンをAIで分析したところ、健常者のオルガノイドと患者のオルガノイドを83%の精度で区別することができた。
アニー・カトゥリア教授は「統合失調症と双極性障害は、パーキンソン病のように脳の特定部位の損傷や酵素の欠如により容易に診断できる病気ではない」と述べ、「しかしオルガノイドを利用すれば、患者がどの疾患に罹患しているかを識別し、またどの薬物がどの濃度で最も効果的かを実験することができる」と説明した。
現在、研究チームはジョンズ・ホプキンズ医科大学の神経外科、精神医学科、神経科学研究チームと共同で実際の患者の血液サンプルを収集し、様々な薬物濃度がオルガノイドの電気活動にどのような影響を与えるかを研究している。
コメント0