
「麻薬との戦争」を宣言した米国のドナルド・トランプ大統領が、カリブ海において麻薬運搬船と疑われる船舶を次々と撃沈したことを受け、民主党は政府による軍事力乱用の有無を明らかにするための聴聞会の開催を要求した。
米国下院軍事委員会の民主党筆頭理事であるアダム・スミス議員は20日(現地時間)に声明を発表し、下院軍事委員会はカリブ海地域における軍事作戦に関して聴聞会を開催し、米南方軍の司令官を召喚して証言を聞くべきだと促した。
彼は、トランプ大統領およびその政権が、カリブ海における米軍の致命的な軍事攻撃命令についての緊急な質問に答えていないと指摘した。今回の空爆は法的正当性が証明できず、手続きの透明性も確保されず、テロ組織に指定された(麻薬)カルテルのリストすら提示できなかったと批判した。
また、スミス議員は、該当船舶やその活動が米国に対し即時かつ差し迫った脅威を与えたため、法執行ではなく軍事力の使用が正当であったというトランプ大統領の一方的な主張を裏付ける証拠を見たことがないと批判した。さらに、共和党所属のマイク・ジョンソン下院議長に対し、直ちに下院を再招集するよう求めた。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)によれば、トランプ政権がこれまでカリブ海で麻薬運搬船と推定される船舶を撃沈した結果、これに伴う死亡者数は現在までに30人を超えているという。これまでトランプ大統領は「私が見守る限り、米国は陸上でも海上でも違法麻薬を密売する麻薬テロリストを容認しない」と述べ、麻薬カルテルに対する強硬な対応方針を示してきた。
トランプ大統領は、麻薬密輸を行っていると疑われる船舶の乗員を「非合法戦闘員」と定義し、彼らに対し空爆での即決処分権限を有すると主張している。しかし、民主党は、麻薬密売容疑者を犯罪者として逮捕するのではなく、「戦時中の敵軍」のように即座に殺害する形での軍事力行使が正当かどうかに疑問を呈している。

民主党の要求にもかかわらず、聴聞会が直ちに開かれる可能性は低いとみられている。聴聞会の開催は、下院多数を占める共和党のジョンソン下院議長の意向次第だからだ。今月1日から米政府のシャットダウン(一時的な業務停止)が始まっており、ジョンソン議長は下院を休会状態に維持している。
NYTは、麻薬カルテルをテロ組織に指定することで軍事力の使用に法的権限が生じるというトランプ政権関係者の主張について「誤った主張」であると指摘した。テロ組織に指定しても、資産凍結やそれに伴う取引を犯罪として規定する措置は可能なものの、武力攻撃を許可する法的根拠はないと報じた。
トランプ大統領は、米軍が撃沈した船舶が米国に致命的なフェンタニルを運んでいた船舶だと主張してきたが、これらの船舶が実際には米国ではなく、欧州やアフリカに向けてコカインや大麻を運ぶ航路を使っていたとの主張も提起された。
ワシントン・ポスト(WP)は、米軍による麻薬運搬と推定される船の撃沈がこれまでに少なくとも6件行われ、そのうち半分近くの空爆および21人の死者が、ベネズエラとトリニダード・トバゴ共和国の間の海域で発生したと報じた。
同紙は「その航路は、フェンタニルのような合成麻薬の運搬路としては一般的に使用されず、主に米国に向かうこともない」と、同航路に詳しい前職および現職の米国官僚の発言を引用して伝えた。
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