米国の住宅価格、6年間で50%上昇
金利下落を期待する若者が変動金利に殺到
全体モーゲージの10%に到達
2008年の金融危機(リーマン・ショック)の引き金となった変動金利住宅ローン(ARM)が、米国の住宅市場で再び拡大している。高金利と住宅価格の高騰を背景に、利息負担を抑えようとする借り手が「今後の金利下落」に賭けているためである。
ただし、金利が予想外に上昇すれば、変動金利ローンが「金融時限爆弾」になるとの警告も出ている。

◇米国で10人に1人が変動金利を選択
米モーゲージ銀行協会(MBA)によると、10月第1週時点で住宅購入目的のモーゲージ申請のうち、約10%が変動金利型だった。これは2023年以降で最も高い比率である。
金利が史上最低水準に近づいていた2021年初めには、その割合は3%未満にとどまっていたが、今年初め(6.3%)から大きく上昇した。
建設業界の現場でも同様の傾向が見られる。「John Burns Research & Consulting」(JBREC)が先月実施した調査では、直近1か月で販売された住宅のうち平均14%が変動金利ローンで取引されたという。
大手住宅建設会社のDRホートンやセンチュリー・コミュニティーズも最近の決算発表で、ARM利用の増加を明らかにした。
今後、住宅ローンを組む際に変動金利を選ぶ借り手はさらに増える見通しである。JBRECの別の調査では、回答した住宅所有者と賃借人の半数以上が「初期金利が固定金利より低ければ変動金利を検討する」と答えた。一方、「変動金利は不安だ」と答えた割合は約3分の1にとどまった。
変動金利ローンは、契約初期に低い金利を設定できる一方、3〜10年後の金利見直し時に返済額が急増するリスクを伴う。また、金利が下落しても再融資(借り換え)を希望する時点で失業や収入減に直面すれば、条件を満たせない場合がある。
2004〜2005年には全モーゲージの約3分の1が変動金利型で、金利急騰を受けて数百万人が住宅を差し押さえられた。これは2008年の世界金融危機を引き起こした要因の一つとされる。
◇住宅価格と税・保険料の上昇が背景
変動金利型が再び人気を集めている背景には、2019年以降の住宅価格の高騰がある。
全米の住宅価格はこの4年余りで50%以上上昇し、過去最高水準に迫っている。さらに住宅保険料や固定資産税も急騰しており、家計の負担感が強まっている。
そこに「金利は今後下がる」という見方が加わり、借り手が変動金利を選ぶ動きが加速した。
米住宅ローン大手ペニーマックのスコット・ブリッジス氏は「月々の返済を抑えるため、年5%台の金利を探す借り手が増えている。ARMはその水準の金利を実現できるほぼ唯一の手段だ」と説明する。
モーゲージ技術会社オプティマル・ブルーによると、10月末時点で30年固定ローンの平均金利は年6.15%だったのに対し、5年または7年満期の変動金利ローンは年5.46%にとどまっている。
◇「危険な賭け」を広げる米若者世代
特に若者世代(1980年代初め〜2000年代初め生まれ)の間で、変動金利ローンが急増している。
モーゲージ技術企業トゥルーワークの調査によれば、最近住宅を購入した若年層のうち約3分の2が、今後3年以内にARMの利用や借り換えを検討しているという。
高金利と過去最高の住宅価格を前に、資産の少ない若年層が「今払える金利」を基準に市場へ参入しているのが実情である。
ただし、金利が予想外に上昇すれば、こうした選択が「危険な賭け」になる恐れがある。
米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年9月に利下げを開始したが、10年物米国債利回りの上昇により、モーゲージ金利はむしろ上昇した。
トゥルーワークの共同創業者ヴィクター・カブデボン氏は「一時的に低い金利が、若い世代に支払い能力を超えた住宅を買わせている。こうした状況は不確実な環境下では金融時限爆弾になり得る」と警告する。
さらに「金利下落に賭けることは、自らコントロールできない変数に賭けるようなものだ」と強調した。
ウィリアム・レイヴィス・モーゲージのメリッサ・コーン副社長も「変動金利を選んだ住宅所有者は常に最悪の事態を想定すべきだ」と指摘し、「この数年、モーゲージ金利の低下を期待する声が多かったが、現実はそうではなかった」と語った。















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