従来の硬い選挙スタイルを脱却
街頭に立ち、市民と直接対話
無料保育など「福祉公約」を強調

ゾーラン・マムダニ氏(34)が、100年以上ぶりに最年少のニューヨーク市長に選ばれた。
民主党候補として出馬したマムダニ氏は、高物価に苦しむ市民の生活環境を改善するための進歩的な福祉公約を掲げ、支持層の結集に成功した。
新しいスタイルの選挙運動に加え、対立する政財界エリートとも協力できる柔軟さ、過去の発言に対する迅速な謝罪なども勝因とみられている。
マムダニ氏は昨年10月に立候補を表明したが、今年1月時点で支持率はわずか1%にとどまり、知名度は低かった。
主要メディアの関心も薄く、党の支援も見込めない状況だった。
従来型の選挙戦では勝ち目がないと判断した彼は、自ら街頭に立って市民と直接対話し、その様子を撮影してSNSに投稿し始めた。
昨年11月、大統領選直後に街頭で市民へインタビューした映像が拡散され、「ニューヨークを財政的に持続可能な都市にする」というスローガンとともに、生活費を抑える政策が注目を集めた。
マムダニ氏は「賃料安定化アパート」の家賃凍結やバス・保育の無償化などを公約に掲げ、超富裕層への増税で財源を確保すると説明した。

選挙運動の手法も従来とは異なっていた。
キャンペーンチームは帽子やうちわなどの関連グッズを大量販売せず、限定版として少量制作し、活動に熱心に参加した支持者にのみ配布した。
この「レア」戦略により支持者の熱意が高まり、ボランティアは数千人規模に拡大し、政策に関係する場所を巡り、最後にマムダニ氏本人に会える「宝探しイベント」には約2,000人が参加した。
またマムダニ氏は財界関係者との対話も避けなかった。
自らを民主社会主義者と称しながらも、懸念を持つ経済界の声に耳を傾け、ラリー・フィンク・ブラックロックCEOやハミルトン・ジェームズ前ブラックストーン代表など、金融界の大物たちと面会した。
その際、別の手段で財源を確保できるなら急激な富裕層増税は行わないと説明し、不安の払拭に努めた。
不動産開発業者との会談では、彼らの長年の要望である規制緩和に言及し、関係者を驚かせたという。
民主党選挙戦略家のジョナサン・ローゼン氏は「マムダニ氏は、私がニューヨークで見たどの政治家よりも多くの質問をし、誰よりも注意深く人の話を聞いていた」とニューヨーク・タイムズ(NYT)に語っている。
さらに、過去の発言をめぐる批判に対しても迅速に対応した。
2020年にSNS上で掲げた「ニューヨーク市警の予算削減」主張を撤回し、同警察を「人種差別的だ」と批判したことについても公に謝罪した。
また、キャシー・ホークル州知事の政策を批判した件でも直接謝罪し、「自分が市長になったら保育政策などで協力したい」と提案し、これを受けてホークル知事は昨年9月、マムダニ氏への支持を正式に表明した。
NYTはマムダニ氏の急速な台頭について、「その成功の軌跡は驚きそのものであり、まさに『メガワット級の人材』の誕生だ」とし、「彼はアメリカで最も影響力のある人々を説得し、魅了し、無防備にさせた」と評している。


















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