トランプ大統領の圧力受け、インドが米国産LPGを初の大規模購入
米国・インドの貿易協議が停滞し、関係が冷え込む中での決定

インドが米国産液化石油ガス(LPG)の大規模購入計画を発表した。ロシア産エネルギーの主要購入国であるインドは、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの「エネルギー禁輸」を求める米国から継続的な圧力を受けており、さらに米国との貿易協議も行き詰まるなど複合的な負担が重なった結果「トランプ大統領の意向通り」米国産エネルギー購入に踏み切ったとみられている。
フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、インドのハーディープ・シン・プリー石油相は17日(現地時間)、米国から年間220万トンのLPGを購入すると発表した。インドの年間LPG輸入量の約1割にあたる大規模な数量である。
昨年時点で、インドの年間LPG輸入量(約2,100万トン)のうち、米国産の比率はわずか0.5%だった。インドは従来、カタールやアラブ首長国連邦(UAE)など湾岸地域を主たる供給元としてきた。前会計年度のLPG輸入総量2,100万トンのうち、UAEが40%を占めた。
2022年以降は、ロシアがインドの主要エネルギー供給国として浮上している。インドはロシアのウクライナ侵攻後、西側諸国が課した価格上限制度を利用し、割安なロシア産エネルギーを調達し続けてきた。
こうした動きに対し、ドナルド・トランプ米大統領はインドに強い不満を示し、圧力を強めていた。トランプ大統領は「ロシア産エネルギーの購入は、戦争資金を供給する行為だ」と主張し、ロシア産エネルギーの不買を求めてきた。加えて、米国産エネルギーの購入が拡大しないことも、トランプ大統領がインドに厳しい姿勢をとる理由の一つとなっていた。
トランプ大統領はインドに25%の相互関税を課し、ロシア産石油の購入を理由に25%の懲罰的関税も追加した。こうした高関税措置により、インドは最大輸出市場である米国で打撃を受け始めている。インド政府が17日に発表したデータによると、対米輸出は先月63億ドル(約9,776億6,738万円)で、前年同月比8.6%減となった。
インドは米国との貿易摩擦を和らげる手段として、LPGの購入拡大を選択したという見方が出ている。ニューデリーに拠点を置くシンクタンク「オブザーバー・リサーチ・ファウンデーション」のリディア・パウエル研究員はFTに対し「米国からLPGを輸入する経済的合理性は乏しい。地理的距離を踏まえれば、湾岸地域からの供給の方がインドにははるかに安い」と指摘し「経済利益よりも政治的利益が大きい判断だ」と分析した。
両国関係の緩和策として米国産エネルギーの購入を進める一方で、インドが割安なロシア産エネルギーの調達を断ち切るのは難しいのが現状だ。トランプ大統領は先月15日のホワイトハウス定例会見で、インドのナレンドラ・モディ首相がロシア産原油の輸入を中断する考えを示したと述べたが、インド外務省は直ちに「そのような議論はなかった」と公式に反論し、ロシア産エネルギーの調達継続を示唆する姿勢をにじませた。
インドは来月、ロシアと会談し、米国からの圧力に対する対応策を協議するとみられる。タス通信によると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は来月上旬にインドを訪れ、モディ首相と首脳会談を行う予定だ。
一方、米国は先月、ロシアの石油企業ロスネフチおよびルクオイルを制裁対象に指定した。これにより、両社と取引する企業にも二次制裁が及ぶ可能性があり、ロシア産原油の販路は急速に狭まっている。アジア最高の富豪ムケシュ・アンバニ氏が所有するリライアンス・インダストリーズをはじめ、インドの公共・民間の製油企業は制裁発動後、ロシア産原油の購入を縮小し始めた。世界最大級の製油所を運営するリライアンスについて、西側外交筋は「ロシア産原油の購入を全面停止する意向を確認した」と述べている。














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