
欧州連合(EU)はロシアの侵攻に備え、兵力や装備が国境を越える際の手続きを簡素化して移動速度を大幅に高める「軍事シェンゲン(加盟国間の国境移動自由化)」構想を発表した。
Newsisによると、欧州委員会は19日(現地時間)に公表した「軍事移動パッケージ」を通じて、2027年までにEU全域で軍事移動インフラを整備し「軍事シェンゲン」に一歩近づくと明らかにした。
EU各国は国境通過手続きを簡素化し、現在は最長45日かかる兵力移動に関する許可手続きを、平時は最長3日、戦時には6時間まで短縮する方針だ。
軍事輸送用車両に関しては、大型車両運転手の休息義務などEUレベルの規制を免除し、優先通行権を付与することで、できる限り迅速な移動を確保する計画だ。
アポストロス・ツィツィコスタス欧州委員(運輸担当)は「軍事装備を東側へ移動させるには現状で数カ月かかる」と指摘し「大陸を横断してこそ防衛が可能なため『軍事シェンゲン』を構築する必要がある」と説明した。
EUは行政手続きの簡略化だけでなく、物理的インフラの強化にも着手する。欧州内の多くの橋や道路網は軍事装備の移動を前提に設計されておらず、改修が避けられないとされる。
カヤ・カラスEU外務・安全保障上級代表は「60トン級の戦車に耐えられない橋が存在することや、滑走路が短いために貨物用航空機への燃料補給ができないケースがある」と問題点を指摘した。
EUは約1,000億ユーロ(約18兆1,460億900万円)を投じ、欧州全域の道路・橋・トンネル・港湾・空港500カ所を補修する必要があると判断した。
このためEUは、2028年から2034年の中期予算案で軍事移動性向上のための支出を現行の10倍規模となる約176億ユーロ(約3兆1,936億2,990万円)に拡大する計画だ。
欧州委員会は、EU予算に加えて、1,500億ユーロ(約27兆2,184億3,600万円)の規模を持つ武器共同調達の融資制度「SAFE(欧州安全保障行動)」の資金も、軍事移動性の強化に投入するとしている。
カラス上級代表は「軍の機動性は欧州の安全保障に不可欠だ」と強調した上で「使用する事態が訪れないことを願うが、備えがあってこそ(ロシアに対する)抑止力が成り立つ」と述べた。
欧州委員会は今後、今回発表した構想を基に、加盟国や欧州議会との協議を進めていく方針だ。















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