「全身の細胞が悪魔だと叫んでいた」妻の警告を無視した代償
マイクロソフト(MS)共同創業者のビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツ。27年間続いた結婚生活に終止符を打った2021年の離婚発表は、世界中に衝撃を与えた。世紀のカップルとして、また世界最大規模の慈善財団運営者として尊敬を集めてきたビル・ゲイツ。その「善良な富豪」というイメージは、破局の過程で次々と明らかになった衝撃的事実によって完全に崩れ去った。なかでも、児童性犯罪者ジェフリー・エプスタインとの不適切な関係、そしてそこから生じた脅迫こそが、離婚の決定打となったのである。
1|離婚の決定打:エプスタインとの「悪魔の取引」

メリンダ・ゲイツが離婚理由として最も重視したのは、夫ビル・ゲイツと性犯罪者の億万長者ジェフリー・エプスタインとの関係だった。後日のインタビューで彼女はこう語っている。エプスタインに初めて会った瞬間、「全身の細胞が悪魔だと叫んでいるようだった」と。そして夫に対し、強く交流の中止を求めたという。
ところがビル・ゲイツは、妻の警告を無視した。2010年代初頭からエプスタインと何度も接触し、ニューヨーク・マンハッタンにあるエプスタインの邸宅を深夜まで訪れることもあった。この邸宅には、著名人との親交を誇示する写真が飾られ、12歳の少女への執着を描いた小説『ロリータ』の初版本まで展示されていた。エプスタインの歪んだ欲望が色濃く反映された空間だったのだ。
ビル・ゲイツとエプスタインの関係は、単なる社交の域を超えていた。それは「黒い取引」とも呼べる繋がりであり、ゲイツの過去の婚外関係をエプスタインに握られたことで、決定的な弱みとなっていった。

ミラ・アントノワとの不倫(2010年頃)
ビル・ゲイツは、ブリッジゲームのトーナメントで知り合った20代のロシア人女性ミラ・アントノワと不倫関係にあった。
エプスタインによる学費支援
その後、アントノワがコーディングスクールの学費を必要とした際、ビル・ゲイツの側近を通じて援助を求めた。そしてその資金を支援したのが、ほかならぬエプスタインだったのである。
脅迫の試み(2017年)
2017年、ゲイツがエプスタイン主導の数千億円規模の慈善ファンドへの投資を拒否すると、エプスタインはゲイツにメールを送りつけた。内容は、アントノワに支援したコーディングスクールの学費を返済せよというものだった。その真意は明白である。「アントノワと何をしたか知っている。投資しなければ世間に暴露する」――これは紛れもない脅迫だった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などの報道でこの事実を知ったメリンダは、ついに決断を下す。夫が児童性犯罪者に弱みを握られ、脅迫まで受けていた――この事実が、離婚への最後の一押しとなったのだ。
2|繰り返された不倫と「変わり者の天才」に欠けた共感力

エプスタイン・スキャンダル以前から、ビル・ゲイツの結婚生活には何度も亀裂が入っていた。メリンダが離婚を決意した背景には、「事実」と「論理」にしか関心を示さず、「共感する力」が決定的に欠けていた夫の性格、そして繰り返された不倫があった。
離婚発表直後、ウォール・ストリート・ジャーナルはこう報じている。ビル・ゲイツが2020年にマイクロソフト取締役会議長を退いたのは、2000年代初頭、社内の女性エンジニアとの不倫に関する取締役会の調査が理由だったと。この女性は2019年末、取締役会宛のメールで、数年間ビル・ゲイツと性的関係にあったことを告発。調査の結果、事実と認定され、ゲイツは取締役会を去ることになった。
さらに、メリンダと結婚した後も、元恋人アン・ウィンブラッドと年に一度、二人きりで旅行を続けるという奇妙な関係を維持していた。メリンダと結婚する前には、アンに助言を求めたというエピソードまである。メリンダは夫の頑固さゆえに、この関係を受け入れざるを得なかったのだ。
ビル・ゲイツは、あらゆることを論理と事実だけで判断しようとする極端な傾向を持っていた。映像では、これを彼自身が語った「軽度のアスペルガー症候群」の特徴と関連づけて分析している。幼少期、両親に部屋を片付けるよう言われると、「なぜ片付けなければならないのか」を論理的に納得しない限り動かなかった。怒った父親が顔に水をかけた時も、「シャワーありがとう」と言って平然と出ていったという有名なエピソードがある。
こうした性質は、人間関係における複雑な感情を理解できないという問題につながった。あるテレビインタビューでは、妻について「画面より実物の方が綺麗ですか?」と聞かれ、「いいえ、画面と実物で大きな違いはないですね」と答え、メリンダを困惑させた。また、共同創業者で友人だったポール・アレンが癌治療で不在だった時期、ビル・ゲイツとスティーブ・バルマーがアレンの持株削減を話し合っているのを本人に聞かれてしまい、結果的にアレンは会社を去った。この悲劇的な出来事もまた、ゲイツの本質を物語っている。
3|「善良な富豪」イメージの終焉

莫大な富と名声、そして尊敬――すべてを手にしていたビル・ゲイツ。それでも彼は、メリンダの感情を顧みることなく不倫を繰り返し、最終的には道徳的に破綻したエプスタインの罠にかかってしまった。エプスタインを慈善事業に役立つ「ただの富豪」としか見ておらず、妻の感覚的な警告を「論理的でない反応」として軽視した。その判断が、最悪の結果を招いたのである。
エプスタインが獄中で死亡した後も、ビル・ゲイツを取り巻く暗い影は消えなかった。すべてを知ったメリンダにとって、もはや家庭を守る道は残されていなかった。
現在、ビル・ゲイツは離婚後に新たなパートナーとの関係を始めている。エプスタインとの関わりについては、「私が苦痛を引き起こしました。恐ろしいことだったと思っています」と、遅すぎた後悔の言葉を口にしている。


















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