米軍が「全員殺害」命令で生存者まで射殺
麻薬運搬船攻撃が波紋拡大


米軍が9月、カリブ海で麻薬運搬船とみられる船舶を空爆した際、生存者に対しても追加攻撃を加え殺害していたことが明らかになった。ワシントン・ポスト(WP)は28日(現地時間)、ピート・ヘグセス米国防長官が「全員殺害」を命じ、統合特殊作戦コマンド(JSOC)がこれを実行したと報じた。
■ 生存者を確認しながら追加攻撃
WPによると、米軍は9月2日、カリブ海で麻薬運搬船の疑いがある船をミサイルで攻撃した後、ドローン映像から残骸にしがみつく生存者2人を確認した。
空爆を指揮したフランク・ブラッドリーJSOC司令官は、生存者について「他の麻薬密売者に連絡して麻薬を回収させる恐れがあるため、合法的標的だ」と判断し、ヘグセス長官の指示を履行する形で二度目の攻撃を命じ、生存者2人も殺害された。
■ トランプ政権下で22隻攻撃・71人死亡
トランプ政権はこの空爆を皮切りに、ベネズエラ近海で少なくとも22隻の船を追加攻撃し、71人を死亡させたとされる。
政権側はこれらの船舶を、テロ組織に指定された麻薬カルテルの船と主張し、乗員を「戦闘員」と位置づけて殺害を正当化している。しかし麻薬密売の証拠は確認されておらず、司法手続きを経ずに殺害した行為は国際法違反だとの批判が強まっている。
■ JSOC「残骸除去が目的」 議会「説明は成立しない」
JSOCは議会への報告で、「船の残骸が航行の妨げになる恐れがあり、沈めるために再攻撃した」と説明し、生存者を殺害する意図はなかったと主張した。しかし議会側は強く反発している。
民主党のセス・モウルトン下院議員は「広大な海域で小型船舶の残骸が航行の危険になるという説明は成り立たない。生存者の殺害は明白な違法行為だ」と批判した。
国際法では、負傷したり、降伏した戦闘不能の相手を処刑することは禁止されている。
■ その後の作戦では救助へ方針転換
WPによれば、米軍は9月2日の空爆を受けて交戦規則を改定し、その後の作戦では生存者を救助する方向へ転換した。
10月16日の大西洋での空爆では、2人が死亡し2人が生存した。生存者は拘束された後、コロンビアやエクアドルへ送還された。
10月27日の東太平洋での作戦では4隻を攻撃し14人が死亡した。生存者1人についてはメキシコ沿岸警備隊が救助できるよう残したが、最終的に発見されなかった。
■ 米・ベネズエラ首脳が通話 FTO指定直前
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、トランプ大統領が最近、ニコラス・マドゥロ・ベネズエラ大統領と通話し、首脳会談の可能性を協議したと伝えた。
通話は、米国がベネズエラの麻薬組織「カルテル・デ・ロス・ソレス(太陽のカルテル)」を外国テロ組織(FTO)に指定する数日前に行われたものだ。
両首脳は米国での会談案を検討したが、具体的な予定には至っていないという。
トランプ政権は8月以降、ベネズエラ近海で軍事プレゼンスを強め、麻薬密輸阻止作戦を強化した。ベネズエラ側はこれを「政権転覆の試み」として強く反発してきた。
トランプ大統領は感謝祭のビデオ通話で「今後は海上だけでなく地上でも、ベネズエラの麻薬密売者を封じ込める」と述べ、強硬姿勢を改めて示した。














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