
ドナルド・トランプ米大統領は15日(現地時間)、米国内に深刻な被害をもたらしている合成麻薬フェンタニルを「大量破壊兵器(WMD)」に分類すると正式に表明した。ホワイトハウスは同日、フェンタニルおよびその主要前駆体をWMDに指定する大統領令を公式サイトで公開し、麻薬対策を国家安全保障の枠組みで扱う姿勢を鮮明にした。
フェンタニルは極めて少量でも致死性が高く、米国では過剰摂取による死亡が急増している。米政府によれば、近年の薬物関連死亡の中心にフェンタニルがあり、社会的損失は公衆衛生の域を超えた国家的危機と位置付けられている。トランプ大統領は「フェンタニルは国を破壊する兵器だ」と述べ、従来の犯罪対策では不十分だとの認識を強調した。
今回の指定には、対外政策上の狙いもあるとみられる。米国はフェンタニル原料となる前駆体の流入を理由に、中国などに対して関税措置を講じてきた。WMD指定により、これらの通商政策を安全保障上の措置として正当化する意図があるほか、ベネズエラを含む南米地域からの麻薬密輸に対し、より強硬な対応を取るための法的根拠を整える狙いも指摘されている。
トランプ大統領はこの日、ホワイトハウスで国境警備に従事する米墨国境警備隊に勲章を授与する場で、「5月には米国史上最大規模となるフェンタニル摘発を実施し、約300万錠を押収した」と成果を強調。「致命的な薬物が流れ込む災厄から米国民を守るため、さらに踏み込んだ措置を取る」と述べた。
また、中国との協力にも言及し、「中国はフェンタニル流通量の削減に向け、われわれと非常に緊密に協力している」と発言。10月末に行われた米中首脳会談で、前駆体管理を巡る合意が確認されたことを踏まえ、外交面での成果をアピールした。
一方で、麻薬を核兵器や生物・化学兵器と並ぶ大量破壊兵器の枠組みに含めることについては、法的妥当性や国際基準との整合性を疑問視する声もある。専門家の間では、定義の拡張が軍事行動のハードルを下げる可能性があるとして、慎重な議論が必要だとの指摘が出ている。
トランプ大統領はさらに、「麻薬カルテルはすでに外国テロ組織に指定している。これは法的にも軍事的にも極めて重大な措置だ」と述べ、「いわゆる『捕まえては釈放する』政策は終わった」と断言した。これらの発言は、今年9月にベネズエラ国籍の麻薬密輸船を攻撃し、生存者に対して二次攻撃を行ったとして国内外から批判を受けていることを意識した反論とも受け止められている。















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