
虚偽情報を正す「ファクトチェック」の活動に携わった個人に対し、米国務省がビザ発給を拒否するよう指示していたことが明らかになった。国際的なファクトチェック機関であるIFCN(国際ファクトチェック・ネットワーク)は「深刻な懸念を表明する」との声明を発表した。
「ロイター通信」は去る3日(現地時間)米国務省がH-1Bビザの申請者およびその家族に関して、コンテンツ管理、ファクトチェック、信頼・安全部門などの分野での勤務経験があるかどうかを、履歴書やLinkedInのプロフィールなどを通じて確認するよう、領事館の職員に指示していたと報じた。
米国務省は、ファクトチェック活動を「検閲の試み」と同一視している。「ロイター通信」が公開した文書には、国務省は「(ビザ)申請者が、米国内で保護されている表現の自由に対する検閲、または検閲の試みに責任がある、またはそれに関与した証拠が見つかった場合、移民国籍法(INA)の特定条項に基づき、当該申請者は(ビザの)資格を有しないと判断すべきだ」と明記されている。
ドナルド・トランプ米大統領は、ソーシャルメディア上で行われる「ファクトチェック」について表現の自由を侵害し、保守派の声を検閲していると主張してきた。2016年にトランプ氏が初めて大統領に当選した後に導入されたMetaのファクトチェック制度は、去る1月にトランプ氏が再び大統領に就任したのを受けて停止された。
こうした「ファクトチェッカー」に対するビザ制限措置をめぐり、国際ファクトチェック・ハブであるIFCNは、9日「深刻な懸念を表明する」との声明を発表した。IFCNは「ファクトチェックはジャーナリズムであり、公開された主張を可能な限り最良の証拠と照らし合わせ、その結果を誰に対しても透明に公開する作業だ」とした上で「この取り組みは公共の議論を強化するものであり、検閲ではない。ファクトチェックは米国憲法修正第1条によって保護されており、米国は長年にわたり報道の自由を支持してきた。ファクトチェックを検閲と混同することは、ファクトチェッカーの役割を誤解している、もしくは意図的に歪曲するものである」と批判した。
IFCNは、また「テクノロジー企業の信頼・安全チームに広範に影響を及ぼす点も懸念される。彼らは、米国人を含む世界中の人々がインターネットをより安全に利用できるよう支えている」と訴えた。その上で「テクノロジー企業によるコンテンツ管理と報道機関によるファクトチェックは、いずれも表現の自由の行使であり、これをビザ制限の理由とすることは、報道関係者や他の人々に萎縮効果を与える」と述べた。
IFCNは2015年に米国で設立され、世界100社以上の報道機関が参加する国際的なファクトチェック・ハブである。ファクトチェックのための原則(ファクトチェック綱領)を策定し、厳格な審査を通じて加盟団体を認定・評価している。2021年には、メディアリテラシー向上やファクトチェック研究支援など、虚偽情報対策への取り組みが評価され、ノーベル平和賞の候補にも選ばれた。













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