
ドナルド・トランプ米政権の宇宙政策のかじ取りを、民間企業家が担うことになった。
「ロイター通信」によると、元民間宇宙飛行士のジャレッド・アイザックマン氏(42)のアメリカ航空宇宙局(NASA)長官に起用する人事案が17日(現地時間)米上院で、賛成67票、反対30票で可決されたという。
アイザックマン氏は、イーロン・マスク氏の側近として知られる億万長者の実業家で、NASAの67年の歴史の中で、元民間宇宙飛行士が長官に就任するのは初めてとなる。
彼に課された最大の課題は、中国との宇宙開発競争で主導権を握ることだ。アイザックマン氏は去る3日の承認公聴会で「アメリカは中国より先に月に戻らなければならない」とし「もし遅れを取れば、二度と追いつけない可能性がある」と強い危機感を示した。
またアイザックマン氏は、2030年までに有人月探査を目指す中国を引き離し、トランプ大統領が掲げる「月への再挑戦」を実現する考えを明確にしている。
彼は高校卒業後、大学へは進学せず、オンライン決済会社「Shift4」を創業して成功を収めた、いわゆる自力で財を築いた起業家だ。これまでに2度の宇宙飛行を経験しており、2024年には民間人として初めて宇宙遊泳を成功させ、広く知られるようになった。
NASAの官僚主義を打破し、民間部門の効率性を組織に取り入れる存在として期待が寄せられている。
一方で、人事をめぐっては懸念の声も出ていた。特に、イーロン・マスク氏が率いる宇宙企業スペースXとの密接な関係が、利益相反に当たるのではないかとの批判を招いた。
アイザックマン氏個人は、スペースXと総額5,000万ドル(約78億6,512万円)規模の「ポラリス・プログラム」に関する契約を結んでおり、彼が経営する「Shift4」もスペースXに投資していると伝えられている。
特に、NASA長官はスペースXとの大型契約を直接監督する立場にあることから「猫に鰹節状態だ」との批判が上がっているという。
トランプ大統領は任期初期にアイザックマン氏をNASA長官に指名したものの、マスク氏との関係悪化を背景に、今年5月に一度指名を撤回した。その数ヶ月後、マスク氏と和解したトランプ大統領は11月にアイザックマンを再指名したとされている。
これまでNASAの長官代行を務めてきたショーン・ダフィー運輸長官は、人事案の承認を受け「2028年に月に戻り、中国に勝たなければならない状況で、彼がNASAを成功へ導くことを期待している」とコメントした。













コメント0