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トランプ大統領、44年間守られた台湾への「6つの保証」を事実上否定 台湾に動揺広がる

梶原圭介 アクセス  

引用:The White House
引用:The White House

米国のドナルド・トランプ大統領が、中国の習近平国家主席と台湾への武器売却問題を「非常に詳細に協議した」と明らかにし、この問題を中国との関係における「交渉カード」として活用する可能性を示唆したことで波紋が広がっている。これは、米国がレーガン政権時代の1982年から維持してきた、台湾への武器売却をめぐり中国と事前協議しないという内容を含む外交原則「台湾への六つの保証」を正面から揺るがす発言だ。台湾だけでなく、他の同盟国に対する安全保障上の約束も取引対象になり得るとのシグナルとして受け止められ、Axiosからは「台湾の親米政権はもちろん、アジアの同盟国である日本や韓国まで不安にさせた」との評価も出ている。在独米軍の削減計画が公式化されるなど、大西洋同盟に深刻な亀裂が生じるなか、トランプ大統領が太平洋地域の同盟国・友好国にも「爆弾」を投下した形となった。

トランプ大統領は15日、2泊3日の中国訪問を終えた後、大統領専用機内での懇談やメディアのインタビューを通じ、こうした考えを示した。台湾への武器売却については「われわれにとって非常に有力な交渉カードだ」と述べ、「売ることもできるし、売らないこともできる」と語った。台湾にとって生存に関わる武器調達問題を、中国との関係における下位の変数として扱うかのような認識がにじむ発言といえる。

現在、トランプ政権は先端ミサイルや各種防衛システムを含む約140億ドル(約2兆2,300億円)規模の対台湾武器売却パッケージについて、最終承認を先送りしている。トランプ大統領は、習近平国家主席と武器売却問題を協議したことが「六つの保証」に反するのではないかと問われると、「それでどうしろというのか」、「80年代はかなり昔のことだ」と答えた。

トランプ大統領「9,500マイル離れた場所で戦争は望まない」…日本や韓国にも波紋

「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領は再登板後、米国の負担を減らし、同盟国の負担分担を拡大する外交・安全保障政策を進めてきた。その過程で、NATO(北大西洋条約機構)加盟国に防衛費増額を強く迫り、欧州駐留米軍の削減・再配置、グリーンランド併合への意欲などを示し、各地で摩擦を引き起こしている。今回の米中首脳会談で浮き彫りになったトランプ大統領の受け身の姿勢により、米国の台湾政策が後退するのではないかという懸念とともに、インド太平洋地域でも同盟国の不安が高まりそうだ。一方、台湾を武力を用いてでも統一すべき自国の「領土」と見なす中国にとっては「機会」になり得るとの評価や懸念が、米国の政界や外交関係者の間で出ている。トランプ大統領とは異なり、歴代の米大統領は台湾海峡の平和と安定を強調し、有事の際には台湾を防衛するとの立場を確認してきた。ジョー・バイデン前大統領も在任中、中国による「前例のない攻撃」があれば軍事介入すると、複数回にわたって明言していた。

台湾は、米国による武器売却を単なる防衛産業の取引ではなく、安全保障支援の意思を確認する核心的なシグナルと見ている。トランプ大統領が公言したように、中国との「関係管理」のために売却を調整するとの印象を与えれば、台湾防衛に対する米国の約束の信頼性は大きく揺らがざるを得ない。ウォール・ストリート・ジャーナルは「トランプ大統領が台湾への武器売却を習近平国家主席と協議したことは、中国指導部が長年追求してきた『拒否権』を与えたものと解釈される余地がある」とし、「域内の同盟国に米国の弱さを示すシグナルになる」と指摘した。台湾への武器売却が米中交渉のカードになり得るなら、米国の他の安全保障上の約束も、コストや交渉の論理に応じていくらでも調整される可能性があるためだ。ホワイトハウスは明示的には「北朝鮮の完全な非核化を追求する」との立場を取っているが、トランプ大統領が金正恩総書記との対話に意欲を隠していない状況では、北朝鮮非核化の原則や米国の朝鮮半島防衛の約束も維持を断言できないとの見方が出ている。

歴代の米大統領が維持してきた戦略的曖昧性を崩し、「台湾独立反対」の立場まで示したトランプ大統領の発言に、台湾側は警戒を強めている。トランプ大統領は記者会見などで、「中国は極めて強大な大国で、台湾は非常に小さな島だ」と述べたうえで、「台湾は中国から59マイル(約95キロ)離れているが、米国は9,500マイル(約1万5,000キロ)も離れている」と語った。さらに「われわれは戦争を望んでおらず、現状を維持するなら中国も受け入れると思う」とし、「誰かが『米国がわれわれを支持しているから独立しよう』と言うことは望まない。いま台湾には独立を望む人物がいて、独立を試みるのは危険なことだ」とも述べている。トランプ大統領は「米国の台湾政策は何も変わっていない」と主張したものの、親米・反中路線を続けてきた台湾の民主進歩党、頼清徳(らい・せいとく)政権による独立志向に否定的な立場を示唆したものと受け止められた。

特に、11月の地方選挙を控え、「安全保障を全面的に米国に委ねてはならない」として対中融和政策を主張してきた国民党の路線に、さらに勢いがつくとの観測も出ている。民進党政権が9日に提出した1兆2,500億台湾ドル(約6兆2,800億円)規模の国防特別予算案は、野党・国民党の主導により7,800億台湾ドル(約3兆9,000億円)が大幅に削減され、議会を通過した。国民党は、軍事的緊張を不必要に高め、実質的な安全保障の保証がないまま米国の軍需産業だけを潤す可能性があると主張してきたが、トランプ大統領の今回の発言により、こうした主張が説得力を増すことになった。台湾外交部は「台湾と米国の緊密な協力は、一貫して台湾海峡の平和の礎だった」とし、「中国の増大する軍事的脅威に対抗し、米国との協力を深め、力による平和を引き続き守っていく」と表明した。

☞ 台湾への六つの保証

1982年、米国のレーガン政権が中国と「台湾向け武器輸出の段階的削減」を約束する第三次共同コミュニケを結んだ際、安全保障上の不安を抱く台湾を安心させるため、非公開で伝えた安全保障上の約束を指す。内容は、▲武器売却の終了期限を設定しないこと ▲中国と事前協議しないこと ▲両岸関係の仲裁を行わないこと ▲台湾関係法を修正しないこと ▲台湾の主権に関する立場を維持すること ▲中国との対話を強要しないことなどだ。法的拘束力はないものの、米国の親台湾政策を支える核心的な根拠となってきた。

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