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2025年08月05日火曜日
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無人輸送ヘリK-MAX、戦場物資の空中補給から災害支援まで担う「空飛ぶトラック」の実力とは

K-MAXは米カマン・エアロスペースが開発した外部貨物専用ヘリコプターで、1991年の初飛行以来2,700 kg超のペイロードを吊り下げ輸送してきた。独自のインターメッシュ・ローター構造により自重を上回る荷を持ち上げ、建設現場や軍用補給で「空飛ぶトラック」と呼ばれている。

テールローターを排した交差反転ローターはエンジン出力を揚力に集中させ、機体幅を抑えて狭所離着陸を可能にする。ローター同士がかみ合うためトルク補正が不要で、強風下でも姿勢を維持しやすく大型貨物を安定して搬送できる。

2011年、米海兵隊はK-MAXを遠隔操作・自律飛行対応の無人航空機(UAS)へ改造し、アフガニスタンに投入した。オペレーターは地上管制局からコックピットを持たない機体を操り、事前設定ルートとリアルタイム指令を組み合わせて補給任務を遂行した。

同年12月以降、無人K-MAXは最前線へ弾薬・食料を空輸し、2013年までに1,000回超の sortie で約1,400 tの物資を届けた。夜間や砂嵐下でも稼働し、地雷や待ち伏せが多い補給路を迂回して兵士のリスクを大幅に低減した。

機体にはGPSとINSを融合した航法装置、フックの自動開放・着鉤機構、障害回避アルゴリズムが組み込まれ、着陸から離脱までほぼ自律で完結する。異常時にはオペレーターが即時介入して手動制御へ移行でき、有人機に近い運用柔軟性を維持する。

2013年6月、強風下での自律着陸中に1機が墜落したが死傷者は出なかった。原因解析を経て制御ロジックは更新され、ロッキード・マーチンとカマンは複数機協調飛行やAI経路最適化など次世代型「K-MAX Titan」の開発を続行している。

日本では奈良県を拠点とするアカギヘリコプターが林業用にK-MAXを導入し、急傾斜地の木材搬出で高効率を実証した。極東貿易も最大吊下2.7 tの静粛性を訴求して国内販売を展開しており、南海トラフ地震を想定した災害訓練でも無人貨物ヘリ需要が高まる見通しだ。戦場起源の技術が、日本の森林資源と危機管理を支える新たな鍵となりつつある。

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