
【引用:X】エンジンが目覚める瞬間、1.6ℓ直3ターボが放つ最初の鼓動は想像以上に荒々しかった。振動が車体の底を突き抜け、まるで生命が宿ったような感覚を伝える。舞台はトヨタ・テクニカルセンター。ニュルブルクリンクを思わせる起伏と連続コーナーが連なるGRの秘密の庭で、GRヤリスとGRカローラの真価を試す機会を得た。

【引用:X】ステアリングを握ったのは、トヨタの「味づくり」を担う核心部隊を率いる豊岡悟志氏。GRヤリスを自在に操る姿は、熟練という言葉では足りない。ブレーキを深く踏まず、ラインを寸分違わず描きながら、車体のバランスを常に保つ。コーナーを抜けるたび、ヤリスの短いホイールベースが生み出す俊敏さが際立ち、路面を捉える感覚が研ぎ澄まされていった。

【引用:X】ジャンプセクションでは、車体が一瞬浮いても不安はなかった。着地の瞬間まで剛性が崩れず、重量バランスが完璧に整っていることを証明する。3気筒ターボは回転を上げるほど荒々しく吠えたが、その音は不思議と調和を感じさせた。単気筒バイクの鼓動ではなく、まるで編成された楽団のようにリズムを刻む。機械の中に“生命の律動”があると実感した瞬間だった。

【引用:X】続いてハンドルを握ったのはGRカローラ。同じエンジンながら、性格は全く異なる。広いトレッドと304馬力の出力がもたらす安定感の中で、車は終始落ち着きを保った。GR-FOURシステムが前後駆動を緻密に配分し、加速時もノーズが沈まない。ステアリング操作に対して車体が正確に応答し、滑り出す寸前のタイヤから伝わる「ここまでなら行ける」という信号が、ドライバーの指先を導いた。

【引用:X】200kmに迫る速度でも車体は揺れず、全パーツが一体で機能するような信頼感が腰に伝わる。3気筒エンジンの不規則な鼓動はGRらしさそのもので、高回転ではタービンの笛と圧縮音が交わり、まるで“生きた機械”が歌うようだった。GRヤリスは瞬発の塊、GRカローラは冷静な理性。対照的な2台に共通するのは、ドライバーの技量を誤魔化さず、ありのままを映し出す誠実さだ。トヨタが語る「良い車」とは、精巧さと狂気の狭間にある“人の温度”を感じさせる存在なのだろう。













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