和解の映画『ビーイング・チャーリー』を共作した巨匠ロブ・ライナー監督、次男を殺人容疑で逮捕

ハリウッドの映画監督ロブ・ライナー監督(78)と妻のミシェル・シンガー・ライナーさん(68)が14日(現地時間)、米ロサンゼルス・ブレントウッドの自宅で刃物で刺され、死亡しているのが見つかった。
ロサンゼルス市消防当局は同日午後3時30分ごろ、救急要請を受けて出動し、住宅内で夫妻の遺体を確認したとしている。ロサンゼルス市警は15日、夫妻の次男ニック・ライナー容疑者(32)を殺人容疑で逮捕し、拘束していると明らかにした。動機や詳しい経緯は公表していない。
米メディアによると、ニック容疑者は10代前半から薬物依存に苦しみ、家族関係にも影響を及ぼしていたとされる。15歳ごろから更生施設に出入りする一方、施設を避けて路上生活を繰り返した時期もあったという。本人は過去のインタビューで、メイン州やニュージャージー州、テキサス州などでホームレス生活を送った経験があると語り、「良い家庭で育ったのに路上やシェルターで暮らすべきではなかった」と振り返っていた。また、幼少期に父親との結びつきを十分に築けなかったとして、依存問題を巡り両親と激しく対立してきたとも明かしていた。

薬物依存から回復した後、ニック容疑者は自身の経験と父親との関係を題材に映画『ビーイング・チャーリー』の脚本を執筆し、ライナー監督がメガホンを取って2015年に公開された。政治的野心を抱く成功した俳優の父と、薬物依存に陥った息子の葛藤を描く作品で、父親が息子に「たとえ私を憎んでも、生きていてほしい」と語りかける場面は、実際の親子の会話が着想の源になったとされる。
当時のインタビューでライナー監督は、専門家の助言を優先しすぎたことへの後悔をにじませ、「資格や肩書のある人の言葉ばかりを信じ、息子の声を聞くべきだった」といった趣旨の発言をしていたという。親子で作品を共作した経験が、過去の傷を癒やし、関係を近づける契機になったとも語っていた。ライナー監督は息子について「機会があればまた一緒に仕事をしたい」とし、その才能に期待を寄せていたと伝えられている。
ニック容疑者が家族とともに公の場に姿を見せたのは、今年9月の映画『スパイナル・タップ2』の試写会だったという。報道では、その約3か月後に今回の事件が起きたとしている。

ロブ・ライナー監督は、伝説的コメディアンのカール・ライナー氏の息子として1947年に米ニューヨークで生まれた。1970年代のシットコム『オール・イン・ザ・ファミリー』でエミー賞を2度受賞して名を上げ、監督としては1984年の擬似ドキュメンタリー映画『スパイナル・タップ』でデビューした。『スタンド・バイ・ミー』(1986年)、『恋人たちの予感』(1989年)、『ミザリー』(1990年)、『ア・フュー・グッドメン』(1992年)、『アメリカン・プレジデント』(1995年)、『最高の人生の見つけ方』(2007年)など、ジャンルを横断して作品を手がけたことでも知られる。
遺族は声明で、突然の死を悼むとともに、深い悲しみの中にあるとして私生活への配慮を求めた。














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