腰痛を訴えている人にとって、歩くことは容易ではない。痛みのため数歩歩くだけでも困難だ。しかし皮肉にも、歩かないと痛みがさらに悪化する可能性があるという研究結果が発表された。
歩行で腰痛リスクが23%低下
最近、アメリカ医師会の会報『JAMA Network Open』に掲載された研究によると、毎日約100分歩く人は、そうでない人に比べて慢性腰痛のリスクが23%低かったという。単に歩くだけでも腰の健康を維持できることが科学的に証明されたことになる。

1万人超のデータを分析
この研究はノルウェー科学技術大学が実施した。研究チームはノルウェーの「トロンデラーグ健康調査」に参加した20歳以上の成人約1万1,000人のデータを分析した。参加者は2017年から2019年の間、加速度計を装着して7日間の歩行パターンを記録。その後、2021年から2023年にかけて腰痛の有無を追跡調査した。
歩行時間が長いほど腰痛リスクは低下
参加者は1日の歩行時間に応じて4グループに分類された。1日78分未満、78~100分、101~124分、125分以上の歩行グループだ。分析の結果、1日の歩行時間が長いほど腰痛を訴える可能性が顕著に減少した。特に中程度の速さや速い歩行は、ゆっくりとした歩行よりも大きな腰痛の予防効果があった。
連続して歩くか数回に分けて歩くかは重要ではない
研究チームは、1日100分を一度に歩くことと数回に分けて歩くことのどちらが効果的かはまだ不明だと述べた。しかし、歩くこと自体が腰の健康に良い影響を与えることは明らかだ。基礎疾患のない人であれば、どのような形であれ歩くことは歩かないよりもはるかに良いという。
歩行は安価で安全な運動
研究を主導したラヤネ・ハダズ博士は歩行の利点について強調した。「歩行は費用がかからず、特別な器具も必要なく、誰でも簡単にできる活動だ」と述べ、「特に腰痛の軽減における歩行の潜在力は非常に大きい」と語った。

短時間から始め、徐々に増やすことが重要
最初から100分歩くことが負担な場合は、短い散歩から始めても良い。ハダズ博士は「計画的な散歩も良いが、日常生活で短い歩行を頻繁に行う習慣をつけることも効果的だ」と述べ、「何より重要なのは、楽しく持続可能な方法で歩行時間を増やしていくことだ」とアドバイスした。
世界中で腰痛患者が増加傾向
腰痛はすでに世界で最も一般的な慢性疾患の一つとなっている。世界保健機関(WHO)によると、現在約6億人が慢性腰痛に苦しんでおり、2050年にはその数が8億4,300万人に達すると予測されている。高齢化と座りがちな生活習慣が主な原因として指摘されている。
椅子から立ち上がり歩くことが治療の第一歩
今この瞬間も、腰痛が日常生活に支障をきたしている人が多くいる。しかし今回の研究は、立ち上がって歩くだけでも痛みを軽減できるという希望を示している。必ずしも大がかりな運動である必要はない。自宅周辺をゆっくり散歩する、昼休みに短時間歩く、エレベーターの代わりに階段を使うなど、できることから始めるだけでも十分だ。