
息切れの激しいランニング、胸がドキドキ?ただの「運動のせい」と片付けるのは危険
夏の訪れとともに、運動への関心が高まっている。中でも特に人気を集めているのが「ランニング」だ。
ジムのランニングマシンを使う人から、河川敷や公園でジョギングを楽しむ人まで、健康的でバランスの取れた体づくりに取り組む姿があちこちで見られる。「夏は運動にぴったりの季節」と実感させられる光景だ。

しかし、夏場の運動中に激しい息切れや胸の圧迫感が繰り返し起こるようであれば、それを単なる体力不足と見過ごすのは危険だ。運動による息切れは普通のことだと思いがちだが、実は心臓病の前触れである可能性もある。
中でも、息切れが長く続く場合は、遺伝性の心疾患である「肥大型心筋症」が疑われる。
肥大型心筋症とは、心臓の筋肉が異常に厚くなることで血液の流れを妨げ、心機能に障害を引き起こす病気である。呼吸困難や胸の痛み、めまいなどの症状が現れることがある。

ある報道によれば、幼い頃からサッカー選手を目指していた20代の男性が、繰り返す息切れや胸の圧迫感に悩まされ、病院を受診した結果、「肥大型心筋症」と診断されたという。
彼はサッカーをした後に激しく息が切れ、呼吸が落ち着くまで1時間もかかることがあったが、運動による一時的な疲労だと軽く考えていた。そのため受診が遅れ、診断がついた頃にはサッカーどころか、日常生活でも呼吸がつらいほど症状が悪化していた。

予兆なく心臓が停止し突然死を引き起こす「肥大型心筋症」
この病が恐ろしいのは、「突然死」を引き起こすリスクがあることだ。特に激しい運動中に心臓の機能が急激に低下し、そのまま命を落とすケースも少なくない。10代後半から30代前半の、いわゆる活動的な若者にもしばしば見られるため、年齢にかかわらず警戒が必要である。「若くて健康だから大丈夫」とは言い切れないのが、この疾の怖さである。

心エコー検査で簡単に確認可能… 家族歴がある場合は予防的検査を
肥大型心筋症は、心不全や不整脈といった心血管系の合併症を引き起こす恐れがあるため、早期に診断し、適切に管理することが非常に重要である。
幸いなことに、この病気の診断るのは比較的簡単で、病院で心臓超音波検査を行うことによって、心筋の厚さや心臓の機能を確認することができる。
心臓超音波検査は健康診断で受けられる場合もある。もし、日頃から息切れや胸の圧迫感を感じることが多いなら、健康診断の項目に心臓超音波検査が含まれているかどうかを確認してほしい。

特に家族に同様の疾患歴がある場合は、症状がなくても予防的に検査を受けることを検討すべきである。
親のどちらかに関連する遺伝子変異があると、子どもに遺伝する確率は約50%にのぼる。必要に応じて、遺伝子検査や心臓MRIなどの詳しい検査を受けることで、より正確な診断が可能となる。

肥大型心筋症の根本的な原因にアプローチする新たな治療法が登場している。
これまでの治療は、症状を抑える薬物療法や、肥厚した心筋の一部を切除する手術が主に行われてきた。しかし近年では、疾患の根本原因を直接狙う新しい薬が開発された。
その代表例が「カムジオス(マバカムテン)」である。カムジオスは、閉塞性肥大型心筋症の原因の一つである心筋内のアクチンとミオシンの過剰な結合を抑え、心臓の収縮機能を正常に調整する働きを持つ。「飲む手術」とも称されるほど効果が高く、1日1錠の服用で呼吸困難や胸の痛みといった症状を和らげるだけでなく、患者の運動機能も大幅に改善できる。

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