一部の地域で豪雨と浸水被害が続いている。集中豪雨が予報されると長靴を履く人が増えるが、専門家はこの選択がかえって命を脅かす可能性があると警告している。日本放送協会NHKは過去に「豪雨時の行動指針」が書かれた防災ポスターで、まず「長靴を履かないこと」と強調した。普段の雨天には便利グッズとなる長靴が、なぜ災害時には避けるべきとされるのか。その意外な理由について考えてみよう。
浸水時に長靴が危険な理由
集中豪雨や浸水時など、水がふくらはぎまで達するような極端な気象状況で長靴を履くべきでないとされる最大の理由は、水が内部まで簡単に入り込むからだ。集中豪雨や浸水時には、水たまりや急流が長靴の高さを超えることがあり、この時長靴の中に入り込んだ水は、排出されずにそのまま溜まってしまう。内部が濡れた長靴を履いて歩くと、足が不快なだけでなく、溜まった水の重さで移動速度も著しく低下する。そのため、迅速な避難が必要な緊急時には致命的な欠点となる。
また、通気性の悪い長靴は汗をかきやすく、濡れた状態が長く続くと細菌やカビが繁殖しやすくなるため、水虫などの感染リスクも高まる。さらに、滑りやすい地面で重い長靴を履いて動くことも負傷の原因となりうる。水が溜まった長靴を履いて転倒すれば、より大きな怪我を招く可能性もある。
豪雨時に命を守るのはスニーカー
その一方で、豪雨時の比較的安全な選択肢としてはスニーカーが挙げられている。スニーカーは長靴より軽く、水が入っても脱ぎやすいため内部に水が溜まりにくい。素早く移動することもでき、ソールが滑り止め構造になっている製品であれば、濡れた地面でもより安全に歩行できる。最近では、水に濡れても速乾性のある、または防水機能が強化されたマリンシューズやメッシュスニーカー、ランニングシューズなども多く販売されており、長靴の代替として実用的な選択肢となっている。
NHKが公開した豪雨時の服装指針
NHKは、豪雨時の服装について具体的な指針を示している。頭を保護できるヘルメットや帽子をかぶり、両手が自由に使えるようバックパックを背負い、防災グッズは最小限に抑えるべきだ。傘や杖を使って移動経路を確認しながら歩き、長ズボンと長袖を着ることも基本。そして何より重要なのは、長靴ではなくスニーカーを履くことだ。
徒歩での避難時に必ず覚えておくべき3つのこと
NHKは、徒歩で避難する際に必ず守るべき3つのルールも紹介している。第一に、長靴を履かないこと。第二に、冠水した地域に立ち入らないこと。第三に、一人で移動せず必ず他の人と一緒に避難すること。このように、実際の災害時には一般常識とは異なる判断が求められる場合がある。
常識を覆すことで生存確率が高まる
専門家は、緊急時には迅速な判断と準備が命を守る鍵になると指摘している。普段は長靴が雨から足を守ってくれるが、豪雨や浸水といった極限状況では、かえって足を拘束する邪魔者になりうる。グリップ力が高い身軽なスニーカーや防水スニーカー、マリンシューズなどが、このような状況ではより合理的で安全な選択となる。
「雨の日には長靴」という常識は、平時の穏やかな天候でしか通用しない。集中豪雨の中で生存確率を高めたいのであれば、まず足元から見直すべきだ。傘よりも重要なのは、正確な情報をリアルタイムで把握することであり、どんな靴を履くかが身の安全を左右する可能性もある。
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