1日1個のりんごで医者いらずと言われるほど、りんごは健康に良い果物だ。ただのおやつにとどまらず、ビタミン、食物繊維、抗酸化物質を豊富に含む自然の恵みであり、健康を守る強力な味方である。しかし、りんごは食べ方によって栄養素の吸収率が大きく変わることが科学的に明らかになっている。正しい方法を知れば、毎日食べているその1個が、2倍の力を発揮する。
りんごは毎日食べると、病院に行く必要がないと言われるほど健康に良い果物だ。
りんごにはビタミンC、食物繊維、そしてポリフェノールなどの多くの抗酸化物質が含まれている。特に皮にはフラボノイドが豊富で、細胞の損傷を防ぎ、炎症を抑える効果があるという。米コーネル大学の研究によれば、皮に含まれるケルセチンは抗炎症作用を持ち、心血管系の健康にも寄与するとのことだ。しかし、皮をむいてしまうと、こうした栄養素の約半分が失われてしまう。
最も重要なポイントは、りんごを皮ごと食べることにある。多くの人は皮をむいて食べるが、皮を取り除くと食物繊維や抗酸化物質のおよそ50%が失われてしまう。英オックスフォード大学の研究によれば、りんごの皮に含まれる食物繊維は腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整えるとともに、消化を通じて栄養素の吸収を助ける働きがあるという。皮付きに抵抗があるなら、有機栽培のりんごを選び、農薬への不安を軽減するのもひとつの方法だ。
りんごはできる限り生で食べるのがおすすめだ。加熱調理すると、ビタミンCのような熱に弱い栄養素が壊れてしまうためだ。カナダ・ゲルフ大学の研究では、100度以上で調理した場合、ビタミンCの含有量が30％以上減少することが明らかになっている。ジャムやパイに加工すると糖分が増え、栄養素の吸収効率がかえって低下するため注意が必要だ。したがって、りんごはなるべく生のまま食べるのが望ましい。
りんごを食べるタイミングも重要である。空腹時にりんごを摂取すると、胃酸や消化酵素によって栄養素がより効率的に分解されるという。東京大学の研究では、朝の空腹時にりんごを食べた人は、食物繊維やポリフェノールの吸収率が20％以上高かったと報告されている。一方、食後すぐにりんごを食べると、ほかの食べ物と混ざり合って消化が遅れ、吸収効率も低下する。特に脂っこい料理と一緒に食べた場合、脂肪が栄養素の吸収を妨げる可能性があるという。
りんごを食べる方法として、すりおろしてジュースにするケースも多いが、これは栄養素の損失を招く恐れがある。米ハーバード大学の研究によれば、りんごをすりおろすことで食物繊維の構造が壊れ、液体状で急速に消化されるため、血糖値が急上昇しやすくなるという。ジュースにするよりも、そのまま丸かじりしたほうがゆっくり消化され、血糖値の安定に寄与する。さらに、噛む過程で唾液の分泌が促進され、消化を助けるとともに、食物繊維が腸内でより長く機能する。
りんごと一緒に摂る食品も、栄養素の吸収率に影響を与える。りんごに含まれるポリフェノールは脂溶性栄養素と組み合わせることで吸収が高まる。たとえば、アーモンドやクルミといったナッツ類と一緒に食べると、脂質がポリフェノールの吸収を促進する効果がある。オランダ・ワーゲニンゲン大学の研究では、りんごとアーモンドを一緒に摂取したグループは、ポリフェノールの吸収率が15％向上したと報告されている。ただし、バターやマヨネーズといった飽和脂肪を多く含む食品は避けるべきだ。これらは消化を妨げ、炎症を引き起こすリスクがあるためだ。
また、りんごの種類によっても栄養素の含有量に違いがみられる。緑色のりんごは、赤色のりんごに比べて抗酸化物質が豊富である。英レディング大学の分析によると、緑色のりんごはポリフェノールの含有量が赤色のりんごより約10％高かったという。健康志向を重視するなら、酸味の強い品種を選ぶのも一つの手だ。
保存方法も栄養素の保持に大きく関わる。りんごは収穫後、時間の経過とともにビタミンCの含有量が減少する。米国農務省の調査によれば、常温で1か月保存したりんごはビタミンCが20％減少したという。一方、4度以下の冷蔵環境で保存すれば、栄養素を最大3か月間保持できるという。
さらに、りんごを食べる際の噛み方も吸収率に影響する。ゆっくりと噛むことで、消化酵素が栄養素をより効果的に分解する。オーストラリア・シドニー大学の研究では、りんごを15回以上噛んだ人は、10回未満しか噛まなかった人に比べ、食物繊維の吸収率が12％高かったと報告されている。これは、よく噛むことでりんごの細胞壁が効率的に破壊されるためだ。
しかし、りんごの過剰摂取には注意が必要である。1日1～2個を目安にするのが理想的だ。カナダ・トロント大学の研究によると、1日3個以上のりんごを摂取した人は、逆に血糖コントロール能力が低下したという。適量を守ることが大切である。
りんごは皮ごと、生で、空腹時に、ナッツ類と一緒に、ゆっくりとよく噛んで食べることが、栄養素の吸収効率を最大化する最良の方法だといえる。
