
テスラは最高経営者(CEO)のイーロン・マスク氏を取り巻く論争と電気自動車(EV)需要の鈍化の中、ヨーロッパ市場に低価格の電気自動車モデルを投入し、販売回復に乗り出した。マスク氏は今回の新型トリムがより幅広い消費者層にアピールし、EV需要を再び引き上げると強調した。
イギリスの新聞「ガーディアン」によると、テスラは現地時間5日にヨーロッパで「モデル3スタンダード」を公式に発売した。販売価格はドイツで3万7,970ユーロ(約607万円)、ノルウェーで33万56クローネ(約484万円)、スウェーデンで44万9,990クローナ(約648万円)となっている。
同社はこれに先立ち、ヨーロッパとアメリカの両市場でモデルYの廉価版トリムを導入し、全車種の参入価格を引き下げる戦略を進めてきた。モデル3とモデルYの低価格モデルは上位トリムで提供されていた一部の高級仕上げや便利装備を削減したが、約480キロメートル(300マイル)を超える走行距離は維持している。価格負担を軽減し、実用距離を重視する消費者層をターゲットにした構成が特徴である。
今回の発売は、ヨーロッパでの販売不振が決定的な要因とされている。テスラは最近、ヨーロッパ主要国で登録台数が明らかに減少している。価格とラインナップで強みを持つ中国のBYDが今春、初めてヨーロッパのEV販売でテスラを上回ったことも負担となっている。
また、マスク氏の政治的発言による逆風も指摘されている。マスク氏はドナルド・トランプ米大統領の選挙運動を公然と支持し、政権内で行政効率化に関する役割を担うなど保守寄りの姿勢を示してきた。その後は財政・税制を巡ってトランプ大統領と対立したものの、極右政党への好意的コメントやヨーロッパ・イギリスの政治家への攻撃的発言が消費者の反発を招いたとみられている。
イギリスでは政策変数も需要の足を引っ張っている。最近の予算案でEV対象の新たな税制が導入された後、先月のイギリスのEV販売増加率は3.6パーセントで、2年ぶりの最も低い水準を記録した。
イギリス自動車製造販売協会(SMMT)のマイク・ホーズ代表は「今回の数値は、EV需要が自動的に伸び続けると想定すべきではないという警告だ」とし、「消費者が電気自動車に転換するためのすべてのインセンティブを提供すべき時に、逆に罰則を課している」と述べた。
イギリス政府は2028年にEVに走行距離連動の道路税を導入し、1マイルあたり3ペンスを課す予定である。それにより、平均的な運転者基準で年間約250ポンドの追加負担がかかると予想されている。テスラの低価格戦略が政策変数や政治的論争を超えて、ヨーロッパのEV市場の熱気を再び呼び起こすことができるか、注目が集まっている。














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