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2025年05月21日水曜日
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大型ドローン「MQ-9リーパー」の時代は終わるか?撃墜相次ぐ現状と今後の展望

引用:米空軍・The War Zone
引用:米空軍・The War Zone

米国の中高度偵察・攻撃用無人機「MQ-9リーパー」は、ヘルファイア空対地ミサイルを搭載し、24時間以上空中で作戦を遂行できることから、これまで「空の暗殺者」として対テロ戦争で最も致命的な兵器の一つとされてきた。先代機である「MQ-1プレデター」とともに、ドローン時代の遠隔操作戦争を象徴する存在である。しかし、米ビジネス・インサイダーは16日(現地時間)、「リーパーはもはや空中で優位とは言えない」と報じた。

グローバル防衛企業のジェネラル・アトミクスが開発したリーパーは、軽飛行機「セスナ172」(全幅約11メートル)よりも大きく、全幅は約20メートルに達する。これほど大型のドローンは、イエメン、レバノン、ウクライナの上空で多数撃墜されており、1機あたりの価格は約3,000万ドル(約43億2,672万円)に上る。

これに対し、イギリスのある軍事専門家は、イギリス軍がこのような中高度長時間滞空(MALE)型ドローンを導入すべきか疑問を呈している。撃墜された際の損失を最小限に抑えるため、より小型で安価なドローンを導入する方が賢明だという。

イギリスのシンクタンクである王立統合軍事研究所(RUSI)のロバート・トーラスト研究員は先月30日の寄稿文で、「MALEドローンは合成開口レーダー(SAR)によって雲を突き抜けて監視情報を提供できるが、これは機体が生存していることが前提だ。現在、その生存性には大きな疑問があり、イギリスは代替的な戦略を模索すべきだ」と述べた。

中高度ドローン、イエメン・レバノン・ウクライナで損失拡大

これは、2023年10月以降、イエメン上空で「リーパー」無人機が親イラン系武装組織フーシ派の地対空ミサイルによって少なくとも15機撃墜されたことが背景にある。フーシ派の対空ミサイルによって撃墜されたとされている。そのうち7機は今年3~4月にかけて破壊されたもので、被害総額は5億ドル(約721億1,214万円)を超えると見られている。

問題は、フーシ派の防空システムが決して最新技術ではない点にある。彼らが使用しているのは1960年代に開発された旧ソ連製のSA-2およびSA-6ミサイル、またはそれを基にしたイラン製兵器とされている。敵がより高度で精密な防空網を備えていれば、リーパーの撃墜リスクはさらに高まるだろう。

また、ロシアによる2022年2月のウクライナ侵攻初期に活躍したトルコ製「TB2バイラクタル」ドローンも、数か月後には姿を消した。ロシアの装甲部隊をレーザー誘導の対戦車ミサイルで攻撃していたこのドローンは、ロシアの防空網が配備された後、数十機が撃墜された。1機あたりの価格は500万ドル(約7億2,112万円)とされている。

引用:RUSI
引用:RUSI

イスラエル軍の偵察ドローン「ヘルメス」がレバノンの武装組織ヒズボラの地対空ミサイルによって撃墜されたことを受け、イギリス軍は苦境に立たされている。これにより、イギリスは2018年に実戦配備したヘルメス450ベースの中高度長時間滞空型(MALE)ドローン「ウォッチキーパー」の運用を2024年3月に終了した。

ウォッチキーパーは2010年に初飛行を行ったが、技術的な問題や墜落事故などにより導入が大幅に遅れていた。

その後、イギリスはより高性能な新型監視用ドローンの開発に着手したが、コストの問題から再び「失敗作」になる可能性も指摘されている。この問題は米軍の「MQ-9リーパー」やトルコ製「バイラクタル」ドローンにも共通している。

英専門家「偵察ドローンの適正価格は20万ドル未満」

トーラスト研究員は、「ウクライナでの評価によれば、ISR(情報・監視・偵察)任務に適したドローンの単価は20万ドル(約2,884万円)未満が妥当だ」と述べた。

これは、低価格のFPV(ファーストパーソンビュー)自爆型ドローンがウクライナ戦争において主力兵器としての地位を確立し、戦場での大胆な機動を阻止し、装甲車両を排除するまでに至ったためである。

数万円から10万円台で大量生産される民間用ドローンを戦場に投入すれば、より低コストで軍事作戦を遂行できるという。もっとも、これらのドローンは搭載能力や飛行高度に制限があり、航続距離も約15キロメートルにとどまるのが実情だ。

引用:米空軍
引用:米空軍

一方、「リーパー」のように高価で大型の無人機は、次第にその姿を消しつつある。実際、約2億ドル(約288億2,694万円)に相当する高高度偵察無人機「RQ-4グローバルホーク」は、機体中央に約2トンのミサイルとセンサーを搭載し、最大航続距離2万2,780km、最高高度20kmという優れた性能を誇るが、イランの地対空ミサイルによって無力にも撃墜された。このため、現在では米軍でも退役が進められているとされる。

そもそもこのような無人機は、初期の有人戦闘機を改良したバージョンに近い。第2次世界大戦中に活躍したF6Fヘルキャット戦闘機は、遠隔操作型の「AQM-34Lファイアビー」へと改造され、ベトナム上空で偵察任務に就いていた。この初期型ドローンは全長約8.6メートルで、「リーパー」とも大きさはあまり変わらない。

特にこのような初期型無人機は、敵の地対空ミサイルによる探知を避ける設計にはなっておらず、撃墜のリスクが高かった。

航空機型ドローンは巡航速度が遅いため、撃墜されやすい傾向もある。たとえば、バイラクタルTB2の巡航速度は時速128km、「リーパー」も時速320kmにとどまる。そのため、フーシ派のような武装勢力でも旧式ミサイルを使って容易に撃墜することが可能だ。

こうした背景から、現在の無人機は「低コストで大量生産可能な低性能モデル」と「高性能だが少量生産しかできない高コストモデル」に用途別で分化しつつある。「リーパー」の後継機は、レーダーを回避可能なステルス機能を備えた、より高精度な機体へと改良される可能性がある。なぜなら、レーダーはいまだに防空網が目標を探知する主要手段であるためだ。

トラスト研究員は、イギリスの国防予算が米国の約1兆1,000億ドル(約158兆5,481億円)に比べ、わずか700億ドル(約10兆894億円)しかないと指摘した。現在導入が進められているMALE(中高度長時間滞空型)無人機計画は失敗に終わる可能性があると警鐘を鳴らした。

トラスト研究員は代替案として、低軌道衛星、高高度気球、係留型飛行船といった技術の活用を検討すべきと主張している。ただし、衛星や気球は常に必要な位置に存在するとは限らず、飛行船は速度が遅く、迅速な対応が難しいという制約もある。そのため、低コストの小型無人機が大型ドローンの能力をある程度補完できなければ、西側諸国の偵察能力は今後低下していく恐れがあると見解を示している。

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