
原発に代わりガス火力発電を推進…周辺国の原発計画に懸念
2023年に原子力発電所の運転を停止したドイツ政府は、近年周辺諸国で見られる「原発回帰」の流れにもかかわらず、脱原発政策を堅持する方針を改めて明確にした。
南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)によれば、ドイツのカタリーナ・ライヒ経済・エネルギー相は22日(現地時間)に開かれたEU(欧州連合)経済相会合で、「加盟国それぞれのエネルギーミックスを尊重する」と述べたうえで、「フランスとは異なる道を歩んでいる。技術には開かれた姿勢が必要であり、今後もその姿勢を堅持すべきだ」と語った。
ドイツの新連立政権は今月初め、フランスが原子力を持続可能なエネルギー源として分類することに反対しない意向を示した。ドイツは2022年、EUが採択したタクソノミー(グリーン分類体系)に原子力が環境に優しいエネルギー源として含まれたことに強く反発していた。
当時、欧州最多の原発を保有するフランスが原子力の分類を強く主張した一方で、すでに脱原発を決定し、ロシア産天然ガスに依存していたドイツは、天然ガス火力発電も同分類に含めるよう働きかけたとされる。
欧州各国では今年に入り、脱原発政策を見直し、原発新設の動きが活発化している。世界初の脱原発国家とされるイタリアは3月、原子力技術の使用を認める法案を承認し、ベルギーも今月15日に議会決議を経て脱原発方針を正式に撤回した。スウェーデン、チェコ、ポーランドも新たな原発建設を進めている。
こうした中、ドイツがフランスの原発に対して反対しない姿勢を見せたことで、自国の脱原発政策も見直すのではないかという憶測が浮上した。今月初めに就任したフリードリヒ・メルツ首相は、総選挙期間中に脱原発政策の見直しを検討すると公約していた。
ライヒ経済・エネルギー相も、過去に連邦議員として原発新設を主張した経歴を持つが、就任直後には20GW(ギガワット)規模のガス火力発電所建設を推進する考えを表明した。その上で「脱原発はすでに完了している」とし、環境省のカールステン・シュナイダー大臣も、前政権の脱原発方針を堅持する姿勢を強調している。
一方で、ドイツ政府は周辺国の原発建設計画に対して敏感に反応している。環境省はベルギーの原発回帰決定について「国家のエネルギーミックスに関する自主的な決定を尊重する」としながらも、遺憾の意を表明した。ベルギーと国境を接するノルトライン=ヴェストファーレン州は、ベルギーの原発の安全性問題を連邦政府と協議することを決めた。