
いまだ米国を代表する企業といえば、アップルである。
スティーブ・ジョブズがiPhoneを開発し、指一本でほぼすべての操作が可能な「スマートフォン時代」を切り開いた。
その後、アップルはエヌビディアが台頭するまで長らく時価総額で世界トップを維持し、米国企業の象徴的存在となっていた。
これに対し、オープンAIは近年急成長を遂げている企業である。生成型AIチャットボットの開発により、世界的なAIブームを巻き起こした。
現在の米国企業における「皇帝」がアップルだとすれば、オープンAIは「未来の皇帝」と言えるだろう。
こうした中で、アップルの最上級幹部が同社を離れ、オープンAIに合流した。特に、創業者スティーブ・ジョブズの「魂の伴侶」とまで称された幹部だった。
iPhoneやApple Watchなどのデザインを手がけてきたジョニー・アイブ氏が、オープンAIに参加したのである。
ブルームバーグなどの海外メディアは21日(現地時間)、オープンAIがジョニー・アイブ氏の設立したAI機器開発スタートアップ「IO」を買収すると報じた。買収額は65億ドル(約9,272億円)に達し、オープンAIの歴史上最大規模の取引となる。
オープンAIは今回の買収を通じて、ハードウェア分野への進出を示唆した。アイブ氏を含む約55人のハードウェアエンジニアおよびソフトウェア開発者が、オープンAIのデザインを総括する予定だ。
「スティーブ・ジョブズの魂の伴侶」とも呼ばれたアイブ氏は、1992年から2019年までアップルに在籍し、iMac、AirPods、iPod、iPhone、Apple Watchなど、現在のアップルを代表する主力製品の開発を手がけてきた。そんな彼が、ついにオープンAIに移籍したのである。
これは、アップルの時代が終わりを迎えつつあることを象徴する出来事と言えるだろう。
近年、アップルは苦戦を強いられている。米中貿易戦争の影響で中国での売上が急減したうえ、iPhone以降、世界を驚かせるような新製品を打ち出せていないのが現状だ。その影響もあり、株価も連日下落を続けている。
アイブ氏の移籍報道を受けて、アップルの株価はこの日2.31%下落し、202.09ドル(約2万8,829円)を記録した。
これにより、アップルの株価は直近5営業日で5%、年初来では20%下落したことになる。
時価総額も3兆180億ドル(約430兆5,315億円)にまで減少し、米国企業の中では第3位にとどまっている。
かつて不動の時価総額1位を誇っていたことを思えば、まさに隔世の感がある。