WWDCで小型モデルを公開予定
AI戦略は「慎重モード」
ハルシネーション懸念とSiriの改良遅延
他社との差拡大か
Appleが最大1,500億(150B)パラメーター規模の大規模言語モデル(LLM)を開発し、社内でテストを進めていることが明らかになった。
性能は、最近発表されたOpenAIの最新モデルと同等のレベルに達しているとされるが、当面は外部公開の予定はないという。
ブルームバーグは最近の報道で、「Appleは30億(3B)、70億(7B)、330億(33B)、1,500億(150B)パラメーターの複数のLLMを開発・テストしており、このうち高性能モデルはクラウドベースで運用される見通しだ」と伝えている。

一方、Appleは今月9日(現地時間)に開催される世界開発者会議(WWDC)で、比較的軽量な「3Bオンデバイスモデル」を外部開発者に公開する予定だ。Appleはこのモデルを通じて、AIを活用したパーソナライズアプリのエコシステム構築を支援するとしている。
高性能な150Bモデルは、現在「Playground」という社内テストプラットフォーム上で性能検証が進められており、OpenAIの最新モデル(通称「o3」)に匹敵する推論性能を示しているという。ただし、一般公開の時期については未定となっている。
公開の遅れの背景には、AIモデルにおけるハルシネーションへの技術的懸念や、Apple経営陣内でのサービス戦略に関する慎重な判断が影響しているとみられる。Appleは現在、独立型のAIチャットボットサービスの導入を控えている。
次世代Siriの改良モデルについても、開発スケジュールが再び見直された。新たなSiriは、単なる大規模言語モデル(LLM)を超えて、ユーザーデータを活用したパーソナライズ機能やiPhoneアプリの操作まで可能にする「AIエージェント」として開発が進められていたが、技術的な成熟度に限界があるとして、スイス・チューリッヒの研究所で新たに開発が開始された。このモデルは2026年のリリースを目指している。
こうした状況を受け、今年のWWDCではAI関連機能よりも、iOS・macOS・iPadOSなど主要オペレーティングシステム(OS)のデザイン刷新と安定性向上を中心に発表が行われる見通しだ。AI関連の発表は、バッテリー管理機能や開発者向けツールに限定されるとみられている。
このような対応は、昨年「Apple Intelligence」機能を拙速に発表したものの、実際の実装が不十分だった反省を踏まえたものと見られる。Appleは今年の秋に正式リリースが確定している機能のみを中心に発表スケジュールを構成する方針だ。
ブルームバーグは、「Appleの慎重な姿勢が、急速に進化する他社のAI技術に追いつくことができるかは不透明だ」とし、「今年のWWDCは、AppleがAI分野でどの程度遅れを取っているかを示す場になるだろう」と指摘している。