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株主側の13兆円請求、地裁判決を覆す 最高裁へ上告方針

福島第一原発事故をめぐる株主代表訴訟で、東京高等裁判所は6日、東京電力の旧経営陣5人に対する損害賠償責任を認めない判決を言い渡した。株主側は13兆3000億円の賠償を求めていたが、裁判所は「事故前に巨大津波を予見することはできなかった」と判断した。
この判決は、東京地裁が2022年に旧経営陣4人に賠償責任を認めた一審判決を覆す内容となっており、原告側は上告する意向を示している。
「切迫感を抱かなかったのも無理はない」高裁判断
争点となったのは、2002年に国の地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」に基づいて、経営陣が津波対策を講じるべきだったか否かという点である。
株主側は「長期評価が巨大津波の可能性を示していたにもかかわらず、東電は対策を怠った」と主張した。これに対し旧経営陣側は「長期評価の信頼性は低く、津波を予測することは不可能だった。たとえ対策を講じても事故は防げなかった」と反論していた。
高裁は「長期評価は原発事業者として一定の配慮を要するが、地震学には未解明の部分が多く、運転停止などを含む具体的な津波対策を取る根拠としては不十分であった」と指摘。さらに「当時の状況下では、津波襲来の切迫感を抱かなかったこともやむを得ない」と述べ、旧経営陣の過失責任を否定した。
株主側は22兆円請求 代表訴訟の経緯
本件は、福島第一原発事故により東電が廃炉費用や避難者への補償などで巨額の損害を被ったとして、株主らが旧経営陣に対して会社に代わって賠償を求めた株主代表訴訟である。
株主側は、東電が旧経営陣に損害賠償を求めなかったことから、事故の翌年である2012年3月に訴訟を提起。会社法に基づく代表訴訟制度を活用し、勝俣恒久元会長ら5人に対し当初22兆円の賠償を請求していた。
地裁では過失を認定し、旧経営陣4人に対して13兆3000億円の支払いを命じたが、高裁では全員が免責された形である。最終的な判断は最高裁に委ねられる見通しだ。