
ロシア・ウクライナ戦争の勃発以降、再武装を進めるドイツで徴兵制の議論が再燃している。志願制度だけでは北大西洋条約機構(NATO)の目標を達成できないという理由からだ。女性にも男性と同等の兵役義務を課すべきだとの意見も出ている。
9日付のドイツ週刊誌「シュテルン」によると、ドイツ連邦議会国防委員長のトーマス・レーヴェカンプ氏は、「学業を終える70万人のうち、連邦軍入隊を選ぶのはわずか1万人だ。自由と繁栄を享受するには、他者の義務に頼るべきではない」と述べ、「男女両方に適用される一般的な徴兵制度の導入を求める」と語った。彼が言及した徴兵制度は、軍隊だけでなく消防署など各種公共機関での一定期間の義務的勤務を含む制度だ。
ドイツ連邦議会国防特任官のヘニング・オッテ氏は、志願兵を増やすという国防省の兵役法改正案では不十分だとし、今年中に徴兵制再導入を議会に提案する意向を示した。
ドイツは、ロシア・ウクライナ戦争勃発後、2011年に廃止した徴兵制の復活を検討していた。しかし、国防省が昨年18歳以上の男女を対象に軍務の意思と能力を調査し、志願制を基本とする兵役法改正案を発表したことで、議論は一時沈静化していた。ところが最近、国防省が現役兵力を最大33%増やす必要があると発表したことで、徴兵制の即時導入を求める声が高まっている。
ドイツのボリス・ピストリウス国防相は5日、NATOの武器・兵力要求に応じるには最大6万人の兵力増強が必要だと述べた。ドイツ連邦軍の兵力は昨年末時点で18万1,150人だ。当初国防省の目標20万3,000人に対し、さらに4万人が不足しているということだ。
ロイターは先月、NATOがドイツに7個旅団、兵力4万人の増強を求める方針だと報じた。ピストリウス国防相は当初、基地や教育施設の不足を理由に、徴兵制による迅速な兵力増強は現実的に不可能だとの立場を示していた。しかし先月の新政権発足後、「施設が予想以上に早く整備されることを期待している」と述べ、兵力不足の場合は徴兵も検討すると態度を変えた。
徴兵制再導入の主張は、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が米国からの安全保障独立を掲げ、「ドイツ軍をヨーロッパ最強の軍隊にする」と宣言して以来、与党・ドイツキリスト教民主同盟(CDU)から主に出ている。新政権の安全保障重視路線に呼応し、当局者らもロシアを事実上の敵国とみなし、戦争に備えるべきだと相次いで主張している。
連邦軍の事実上のトップであるカルステン・ブロイヤー陸軍大将は、最近のメディアインタビューで、ロシアがウクライナ戦争をNATOとのより大きな紛争の延長線上で捉えており、4年以内にNATO加盟国を侵攻する可能性があると述べた。さらに「2029年以前ではないという保証はない。だからこそ、我々は今夜にでも戦える態勢を整えなければならない」とも語った。
連邦軍事調達局長のアネット・レーニク=エムデン氏は「我々には実質3年しかない。2028年までに防衛態勢に必要なすべての準備を整えなければならない」と述べ、今年中に100件の武器購入案を議会に提出する意向を示した。
ドイツ連邦国民保護災害援助庁(BBK)のラルフ・ティスラー長官は「戦争は備えるべきシナリオではないという考えが長年広まっていた。今や欧州の大規模侵略戦争の危険が我々を脅かしている」と主張した。彼は地下鉄の駅や公共建物の地下空間、地下駐車場などの避難施設の収容能力を現在の48万人から100万人に増やし、4万個の個人用警報サイレンを倍増させるべきだとし、今夏に具体的な計画を発表する意向を示した。