
ドナルド・トランプ米大統領とテスラのイーロン・マスクCEOの対立を受け、両者に近い米政財界の関係者が和解を促している。
8日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)は、共和党のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)やヘッジファンドマネージャーのビル・アックマン氏ら政財界の関係者が、両者の対立による政治的・商業的損失の拡大を防ぐため和解を呼びかけ、マスク氏もその可能性を排除していないと報じた。
クルーズ議員は「多くの保守派が望ましくないと感じている」とし、「全員で抱擁し、和解しよう」と呼びかけた。
アックマン氏は、先週トランプ大統領への批判を強めたマスク氏が和解に応じる兆しを見せていると明かした。
トランプ大統領は6日、CNNに対しマスク氏について「考えていない」と述べ、「共和党と競合する候補を支援すれば深刻な結果を招く」と警告した。
政府効率化省(DOGE)を率い、米政府の構造改革や予算・支出削減を主導したマスク氏が、トランプ大統領の予算調整法案に不満を示したことで、今回の対立が始まった。
ワシントン・ポストは、トランプ大統領がマスク氏の薬物使用に批判的で、さらに内国歳入庁(IRS)長官代行にスコット・ベッセント財務長官が推薦したIRS最高執行責任者(COO)のメラニー・クラウス氏を任命したことにマスク氏が反発し、両者がホワイトハウスで揉み合いになったことで大統領の怒りを買ったと報じた。
マスク氏は自身が推薦した米航空宇宙局(NASA)長官候補のジャレッド・アイザックマン氏が任命されなかったことに不満を募らせたという。
アイザックマン氏は昨年、民主党政治家への政治献金により問題視された。
米シリコンバレーのある共和党寄付者によると、マスク氏は数十億ドルを投資した投資家からの電話にも出ていないという。
テスラとスペースXに投資したティム・ドレイパー氏は、トランプ大統領とマスク氏が協力してDOGEを立て直すよう呼びかけた。
シリコンバレーの大物を含む米IT業界はDOGE設立に積極的であり、シリコンバレーはトランプ政権の減税と規制緩和に期待を寄せている。
マスク氏は昨年の米大統領選でトランプ陣営に2億5,000万ドル(約361億4,727万8,500円)を寄付した。
仮想通貨分析企業メッサーリ創業者でトランプ大統領支持者であるライアン・セルキス氏は、今後数週間以内にマスク氏が態度を軟化させて復帰すると予想した。一方、米法曹界とベンチャーキャピタルのコンソーシアム「ヒル&バレー・フォーラム」を率いるデリアン・アスパルホフ氏は、両者の緊張緩和は容易ではないと懸念を示した。
さらに、マスクの宇宙企業スペースXがホワイトハウスからさらに疎外されるだろうと予想した。
ホワイトハウス関係者は、トランプ大統領とマスク氏が和解しても以前とは明らかに異なる関係になるだろうと明かしている。
しかし、ワシントン・ポストはトランプ大統領がJ・D・ヴァンス副大統領ら側近にマスク批判を控えるよう指示していることに注目し、和解の可能性が残されていると分析した。
FTは、これまでマスク氏がワシントンDC駐在のシリコンバレー大使のような役割を果たしてきたとし、この空白を埋めるため、マスク氏のライバルであるOpenAI のサム・アルトマンCEOらシリコンバレーの大物が新たに台頭する可能性があると伝えた。