
関西電力グループが変電所と送電線の新設・増設に1500億円以上を投じる方針を明らかにした。東京電力ホールディングス(HD)も千葉県内の送電網を強化するため、追加投資を行う予定だ。これらの動きは、生成AIの普及に伴い、データセンターの建設ラッシュに対応する狙いがある。
関西電力送配電は2026年以降、西大阪変電所や新生駒変電所など計4カ所で変電設備の強化に着手する。2027年から2029年にかけて各所の変圧器増設を完了すれば、電力処理能力は約3割拡大する見通し。送電線の新設や増強も並行して進める。
データセンターは、人口密集地に近くて広い敷地が確保しやすく、水害リスクが低いエリアに集まりやすい。実際、箕面市や生駒市周辺では既に複数のデータセンターが稼働しており、インフラ整備が進むことで新規施設の誘致が加速している。
東京電力の送配電子会社である東京電力パワーグリッドは、2030年代初頭までに千葉県北西部の送電網を強化するため2,000億円超を投資する計画を公表した。印西市と白井市では、グーグルを含む複数のグローバル企業が既にデータセンターを運用しており、今後も約40件の新設予定が控えているという。
2024年6月には、印西市に新設した大型変電所によって電力供給能力を1.5倍に引き上げたが、さらなる需要に対応するため追加投資が決定された。広域運営推進機関によると、全国のデータセンターや半導体工場による電力需要は、2025年の36億kWhから2034年には514億kWhに急増すると予測されている。
政府はこうした流れに対応し、送配電インフラ整備を送配電事業者の重要任務と位置づけており、電力とデータ通信網の統合整備、いわゆる「ワット・ビット連携」を重視している。
関西電力送配電は、電力供給に余裕があり、低コストでデータセンター建設が可能なエリアを可視化した「ウェルカムゾーンマップ」の公表を進めており、事業者との連携強化にも力を入れている。
一方、送電網強化には課題もある。データセンター事業者は、最寄りの変電所から自社施設への直結線などの整備費用を全額負担しなければならない。一方で、発電所から変電所までの高圧送電網整備費用は電力会社が負担しており、このコストが一般家庭の電気料金に転嫁される懸念も指摘されている。
さらに、データセンター建設の遅れにより、整備済みの送電網が実際には使用されないケースも発生しており、投資回収が課題となる可能性もあると日経は伝えている。
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