ビットコイン市場に長年沈黙していた「サトシ時代」の超大型ウォレットが突如として動き出し、暗号資産業界に衝撃が走っている。

今月初め、2011年以降一度も取引履歴がなかった複数のビットコインウォレットが一斉に活動を再開。評価額にして86億ドル(約1兆2,400億円超)がわずか数時間で移動された。特に1万BTCを保有する8つの「クジラウォレット」が同時に動いたことが、市場に混乱と不安を広げた。
これらのウォレットは当時1BTCあたり0.78~3.37ドル(約113~489円)という価格で購入されたもの。現在の価格(10万8,000ドル・約1,566万7,094円前後)と比較すれば、およそ14万倍の利益が実現可能な状況だ。このような大規模な移動は、投資家の利益確定や一斉売却の予兆として受け止められ、価格崩壊への警戒感が一気に高まった。
分析企業アーカム・インテリジェンス(Arkham Intelligence)がこの動きを捉えた後、複数の仮説が飛び交っている。暗号資産専門メディア『コインゲイプ』などによると、主要アナリストの多くは「長期保有者による利益確定」と見る。一方で、セキュリティ強化やウォレット復旧といった技術的要因も指摘されている。
さらに、米国政府の関与を疑う声もある。ドナルド・トランプ大統領が署名した「Buy Beautiful Bill(BBB)」以降、政府が戦略的BTC備蓄を目的に「クジラ」に接触した可能性が浮上。ある投資家は「これは政府によるビットコイン買い入れの一環かもしれない」と推測している。
また、BTC移動前にビットコインキャッシュ(BCH)でテスト送金が行われたことを根拠に、「ハッキングまたは秘密鍵の流出」とする見方も出ている。中には、初期投資家として知られるロジャー・バー氏の関与を疑う声もあり、彼は6月にスペインの刑務所から保釈されたばかりだ。
こうした憶測が飛び交う中、ビットコイン市場は短期的な調整局面に突入。価格は横ばいとなり、投資家らはさらなる売却の動きと市場全体の流動性の変化を注視している。
なお、今回の動きは、主要法案が議論される「クリプトウィーク(Crypto Week)」を目前に控えたタイミングで発生しており、今後の市場トレンドを占う上で重要な転換点となる可能性もある。スタンダードチャータード銀行は「年末までにBTCが20万ドル(約2,899万9,979円)に達する可能性がある」と強気な予測を発表している。
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