
ドナルド・トランプ米大統領が、約半年ぶりに突如として姿勢を変えた。ウクライナ支援を否定してきたこれまでの発言とは裏腹に、プーチン政権を批判する側に回ったのだ。だが、この態度変更がどこまで本気なのか、そしてどれほど長続きするのかには疑問が残る。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』は14日(現地時間)、トランプ大統領がNATO(北大西洋条約機構)のルッテ事務総長との会談で、アメリカは和平合意以外に関与する意図はないと語ったと報じた。記者団には「これは私の戦争じゃない。バイデンと民主党の戦争だ」と強調。不本意ながらもプーチン政権に対抗する姿勢を見せた。
特にトランプ大統領は「プーチンに騙された」との見方に神経を尖らせている。「プーチンはクリントン、ブッシュ、オバマ、バイデンは騙したが、私を騙すことはできなかった」と強調するなど、批判をかわそうと必死だ。
上院で検討中の、ロシア産の石油・ガス輸入国に500%の関税を課す法案にも前向きな発言をしたが、支持は明言せず。現在進行中の中国やインドとの交渉を見据え、含みを持たせた格好だ。
先週にはプーチンに対し「とんでもない嘘をついている」と初めて公然と不満を示し、自分も欺かれたとする発言まで飛び出した。米上院のシャヒーン議員は「ようやく彼もプーチンに弄ばれていると気づいたようだ。歓迎すべきだが、持続性は未知数」と冷ややかに評価している。
だがロシア側の反応は意外だった。トランプ大統領の「対露強硬」発言直後、モスクワの株式市場は2.5%上昇。ロシア上院のコサチョフ議員は「トランプの発言は戯言に過ぎない。50日もすれば変わる」と断じ、あくまで本気ではないと見ているようだ。
実際、トランプ大統領は過去10年にわたってプーチンを厳しく批判したことはほとんどない。2017年には「殺人者はどこにでもいる。アメリカが潔白だとでも思っているのか」と語り、プーチンをかばったことすらある。ウクライナ侵攻直後も「暴力的だが賢くやった」と称賛していた。
そんなトランプ大統領が変わった理由として、一部では「個人的な不快感」が背景にあるとの見方も出ている。大統領在任中にプーチンと6回通話したが、成果が見えないと苛立ちを募らせていた。今月初め、プーチンとの通話の数時間後にウクライナへの大規模空爆が実施され、完全に面目を潰された形となった。
国防総省が一時中断していたウクライナへの武器支援を再開したというトランプ大統領の発言も、実際にはオバマ・バイデン両政権の「対露強硬策」への回帰とは言い難い。
彼のスタンスはあくまで「距離を取る」姿勢であり、真の方向性はまだ見えていない。
注目の記事