かつて世界時価総額1位に君臨したアップルの株価が低迷し続けているという。ウォール街では、AI分野への投資や人材獲得を積極化すべきだとの圧力が高まっている。

今年に入り株価14%下落、時価総額5,280億ドル(約78兆5,294億2,600万円)減少
14日(現地時間)、米ブルームバーグ通信によると、アップルは現在、ウォール街や株主から事業戦略の見直しを求める圧力を受けている。競合他社に比べて全く上昇していないためだという。今年に入ってアップルの株価は14.45%下落し、ナスダック総合指数が年初来7.05%上昇しており、対照的であると指摘されている。減少したアップルの時価総額は約5,280億ドルにのぼり、テスラの時価総額1兆210億ドル(約151兆8,224億5,000万円)の半分近い規模に相当するという。
このため、アップルは現在「時価総額4兆ドル(約594兆8,482億4,000万円)クラブ」の中でも大きく後れを取っている。米エヌビディアは今月10日時点で時価総額が4兆ドルを突破したが、アップルは3兆1,200億ドル(約463兆9,847億5,000万円)にとどまっている。2018年、2020年、2023年と、時価総額で1兆・2兆・3兆ドル(約446兆1,391億9,000万円)を世界で初めて達成してきたアップルにとっては、異例の失速と受け止められている。ブルームバーグ通信は「投資家はアップル株の下落とAI関連機能の投入遅れを懸念しており、慎重すぎる経営スタイルからの脱却を求めている」と報じている。
アップルは先月開催した開発者会議(WWDC)でも目立ったAIの成果を示せず、WWDC初日、アップルの株価は小幅ながら下落した。WWDC後に株価が下がったのは2013年以来、約12年ぶりだったとのことである。さらに米中間の関税問題も株価の下落圧力となっている。ドナルド・トランプ米大統領は以前、「iPhoneは米国内で製造されるべきだ。そうでなければ最低25%の関税を課す」と発言している。
ウォール街「AI企業を買収すべきだ」
ウォール街では、AI関連企業の買収や出資を通じて、アップルがAI競争力を強化すべきだとの声が相次いでいる。シティグループのアナリスト、アティフ・マリク氏は「アップルが有望なAI企業の買収や主要株式への投資を行えば、投資家の見方も前向きに変わるだろう」と指摘した。
アップルはこれまで大規模な買収(M&A)には消極的とされており、2014年にヘッドフォンメーカー「Beats(ビーツ)」を30億ドル(約4,459億5,517万円)で買収した案件が、現時点では最大規模とみられている。一方でアップルは最近、AIスタートアップ「パープレクシティAI」の買収を社内で検討していたとされる。ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブス氏は「アップルは当然、パープレクシティを買収すべきだ。仮に300億ドル(約4兆4,591億9,830万円)を投じたとしても、それに見合う収益化の可能性は大きい」と予測した。
ウォータータワーリサーチのチーフアナリスト、ポール・ミックス氏も「今のアップルには独自にAI革新を起こすのは難しい。変革の兆しを見せるためにも、大規模な買収が必要だ」と指摘する。
一部では「ティム・クックCEOの交代論」も
ブルームバーグ通信は「AI投資においてアップルはメタと比較される」と報じている。メタは巨額を投じてAI人材の獲得や大規模なデータセンター建設を進める一方で、アップルはそうした動きを見せていないという。メタはチャットGPTの開発企業であるオープンAIの研究者10人以上を、最大1億ドル(約148億6,686万8,000円)の報酬を提示して採用したとされる。また、メタはアップルのAIモデル開発総括責任者を、推定2億ドル(約297億2,765万4,000円)規模の報酬で引き抜いたとされる。最近では音声AIスタートアップ「プレイAI(Play.ai)」も買収している。
アップルはメタ以上に資金力があるにもかかわらず、AI投資に消極的だと指摘されている。3月末時点のアップルの現金と有価証券などの流動資産は1,330億ドル(約19兆7,701億1,800万円)にのぼり、メタの約2倍の規模だという。こうした状況を受け、一部からは経営陣交代を求める声も出ている。テック系リサーチ企業ライトシェッドのウォルター・ピエシック氏は「アップルはティム・クックCEOを交代すべきだ。1年前に約束したAI機能を何も発表しておらず、AI競争で大きく遅れを取っている」と語っている。
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