
米国が中国産の黒鉛に対し、新たに93.5%の関税を課す方針を固めた。リチウムイオンバッテリーの主要原料である黒鉛へのこの措置は、EV(電気自動車)産業全体に深刻な影響を及ぼす可能性がある。
19日(現地時間)、『ブルームバーグ』が報じたところによると、米商務省は中国が不当に補助金を提供していると認定し、反ダンピング関税を適用する予定だという。これにより、既存の関税と合わせた総関税率は160%を超える見通しとなった。
EVバッテリーの製造に不可欠な黒鉛は現在、中国が世界供給の大部分を占めており、すでに一部原材料には輸出制限がかかっている。こうした状況での新関税は、自動車メーカーが直面するサプライチェーンの不安定化をさらに悪化させる可能性がある。
米EV大手のテスラはこの関税に反発しており、「米国内の供給網はまだ中国からの輸入に頼らざるを得ない段階にある」と主張している。
業界関係者によると、新たな関税は電気自動車のバッテリー生産コストを1kWhあたり7ドル(約1,040円)以上押し上げると予測されており、最終製品価格への転嫁は避けられないとの見方も出ている。
こうした動きは、トランプ政権が最近、7,500ドル(約111万円)のEV税額控除制度を「大きくて美しい法案」の一部として廃止したタイミングと重なる。税制上の優遇を失ったEV業界にとっては、さらなるコスト増のダブルパンチとなりかねない。
影響は中古車市場にも波及している。米自動車市場調査会社コックス・オートモーティブによると、米国の中古車平均価格は2022年8月以来の高値水準まで急騰しており、新たな関税の余波がすでに表面化している。
トランプ政権の関税政策が、今後のEV普及や価格動向、そして米中経済摩擦にどのようなインパクトを与えるのか、業界関係者や消費者の関心が高まっている。
注目の記事