
中国に入国した米商務省特許商標庁所属の中国系男性職員が、今年4月の入国直後に拘束され、出国を禁じられていたことが明らかになった。米連邦政府の職員が中国で出国を禁止されるのは初めてとされ、米中関係への影響も懸念されている。
米紙ワシントン・ポスト(WP)は20日(現地時間)、「当該職員がビザ申請書に米政府職員であることを記載していなかったため、出国を禁止された」と報じた。関係者によれば、職員は中国・成都で一時拘束された後、米政府関係者とともに北京へ移動したという。一時は米国パスポートが押収されたものの、その後返還されたとされる。
現在、職員の正確な所在については確認が取れていないという。
サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は、身元保護のため名前は非公開としており、今回が連邦職員に対する初の出国禁止措置だと伝えている。
一方、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、米金融大手ウェルズ・ファーゴの中国系上級取締役であるマオ・チェニュエ氏も最近、中国で出国を禁止されたという。マオ氏が中国に入国した時期や、出国禁止の理由については明らかにされていない。
ウェルズ・ファーゴはこの件を受け、中国への出張をすべて中止したとのこと。WPは、こうした動きが米中間の貿易摩擦の激化する中で発生したと指摘している。
一部では、10月に韓国で開催予定のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席が会談する可能性も取り沙汰されている。
米政府関係者はWPに対し、「米政府の最高レベルから中国側にメッセージが伝えられ、職員の解放を求めた」と述べたという。また、マルコ・ルビオ国務長官は、ラオスで開かれた東南アジア首脳会議で中国の王毅外相と会談した後、「首脳会談の実現可能性は非常に高い」との見方を示した。
米国務省は「海外滞在中の米国民の安全確保と保護を最優先事項としている」としながらも、今回の件についての詳細な言及は避けている。
在中国米国大使館も事件に関するコメントは控えている。
一方で、ワシントンの中国大使館の報道官であるリュウ・ペンギュウ氏は「この件については把握していない」とした上で、「中国は常に外国人の入国を歓迎し、合法的権利を保護している」と述べた。
また、米下院・中国共産党特別委員会のジョン・ムーレナー委員長(共和党・ミシガン州)は「今回の件は、中国が人質外交を行っている一例と見られる」と指摘し、強い懸念を示した。「中国によって不当に拘束されている米国人はこの職員だけではない」とも語っている。
WPによれば、現在中国で出国禁止状態にある米国人は少なくとも数十人に上り、その多くが中国系だという。正確な人数は不明ながら、出国時や自発的な申告を通じて判明するケースが多いという。
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