
ロシアは、西側の制裁を回避するため「冷却装置」と偽って輸入した中国製エンジンを用い、ウクライナ攻撃用のドローン生産を行っている実態が明らかになった。
ロイター通信は23日(現地時間)、匿名の欧州安全保障関係者3名の話を引用し、ロシア国営軍需企業「アルマズ・アンティ」の子会社「IEMZクポル」がこの手法により「Garpiya-A1」ドローンの生産量拡大に成功したと報じた。
Garpiya-A1は、ロシアが独自の生産体制を構築して開発した自爆型ドローンである。以前は、イラン製「シャヘド136」をロシア仕様に改良した「ゲラン2」と外観が類似していたが、構造や部品においては異なる点がある。デルタ翼構造に加え、後部に垂直尾翼を装備することで安定性と航法性能を向上させた。また、中国製L550Eピストンエンジンを搭載し、国産化を進めたことも特徴である。

特筆すべきは、Garpiyaドローンが従来のシャヘドよりも軽量の弾頭を搭載し、全体重量を軽減した一方で、射程距離を従来の1,000kmから最大1,500kmまで延長した点である。専門家は、これをロシア側が長距離攻撃能力の確保を意図した設計とし、航続性能の向上とエンジン効率の改善が相まった結果と分析している。
一方、弾頭の威力が若干低下した可能性も指摘されているが、固定インフラ攻撃用途としては十分な戦術効果を発揮すると評価されている。
ロイター通信は、関連契約書、取引明細書、税関書類などを精査し、これらの内容を裏付けた。同社が入手したIEMZクポルの内部文書によると、ロシア国防省との契約に基づき、Garpiyaドローンの生産台数を昨年の3倍にあたる6,000機以上に増加させ、そのうち1,500機以上は4月までに納入済みであるという。
ロシアは、前線から遠く離れたウクライナ領内深部の標的を攻撃するためにGarpiyaドローンを使用しており、ウクライナ軍情報当局は、毎月約500機が実戦投入されていると説明している。

これに先立ち、ロイター通信は昨年9月、IEMZクポルが中国の「厦門リムバッハ社の航空エンジン」からL550Eエンジンを調達し、Garpiyaドローンの製造に活用していると報じていた。その後、米国および欧州連合(EU)は、厦門リムバッハ社を含む部品供給業者に対し制裁措置を講じ、IEMZクポルのサプライチェーンの遮断を試みた。
しかし、制裁発表後、「北京西橋国際技術貿易有限公司」という中国の新興企業が再びIEMZクポルに同型エンジンを供給しているとの情報がある。ロイター通信は、この企業が厦門リムバッハ社からどのようにエンジンを入手したかは不明と伝えている。
IEMZクポルは2022年12月からEU、2023年12月から米国の制裁対象になっている。関連企業およびロシア政府機関は、本報道に関するロイター通信の取材に対してコメントを控えている。
中国外交部はロイター通信に対し、「Garpiyaドローン用部品の輸出については認識していなかった」と述べ、デュアルユース品(民生・軍事両用可能な製品)の対外輸出は自国の法規および国際規範に則って管理していると説明した上で、「国連安保理の承認を得ていない一方的な制裁には反対する」という従来の立場を改めて強調した。
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