
米国と台湾が、これまで半日以上かかっていた両国間の移動時間を数時間程度に短縮する革新的な方法を模索していると、香港紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)』が22日に報じた。
その鍵となるのが「弾道飛行(Suborbital flight)」である。これは宇宙船が一時的に地球の大気圏を離脱し、再突入して滑走路に着陸するという新たな宇宙輸送の形態だ。
米国在台湾協会(AIT)は21日、SNSを通じて「両国の宇宙輸送に関する協力方策について、評価と協議が進められている」と明かした。
AITによると、弾道飛行を活用すれば、台北とヒューストン間の移動時間は、現在の14時間30分から最短で2時間30分程度に短縮できるという。ヒューストン・エリントン空港は、すでに合法的な宇宙港としての運用許可を取得している。
「弾道飛行はまだ実験段階にあるが、今後数十年以内に長距離移動の在り方を一変させる可能性がある」とAITは述べた。
また、当初は無人の貨物輸送に注力し、将来的には有人飛行も視野に入れているという。
22日、台湾の国家科学技術委員会(NSTC)は、米国との宇宙協力に対して楽観的な姿勢を示し、「具体的な輸送計画はまだ評価中である」と説明した。
台湾外交部も「必要に応じて関係機関間の協議を支援する」との立場を示した。
AITの発表は、米国が連邦航空局(FAA)の主導で商業宇宙輸送の取り組みを加速させている中でなされた。FAAは、世界的に標準化された宇宙港ネットワークの構築を目指している。
エリントン空港は、米国内にある20のFAA認証宇宙港のひとつだ。一方、台湾には認証済みの宇宙港施設は存在しない。
宇宙港とは、人工衛星や無人探査機、有人宇宙船などを地上から打ち上げ・着陸させるための施設である。
宇宙や工学の専門家らは台湾メディアとの取材で、「構想は有望だが、高度に専門化されたインフラが必要になる」との見方を示している。
AITは当初、SNSの投稿で台湾南部・屏東(ピンドン)県の九鵬(ジウポン)地区を宇宙港候補地として挙げていたが、その後の投稿ではこの言及が削除された。
今年初め、国家科学技術委員会(NSTC)は、屏東県満州郷(マンジョウ郷)の九鵬村を台湾初の公式なロケット発射センター建設地に指定しており、現在は建設と環境評価が進められている。完成は2031年を予定している。
同センターは当初、垂直離陸に対応するが、将来的に着陸機能も備え、宇宙港としての役割を担えるように拡張する計画だという。
米国は弾道飛行の打ち上げ技術を有しているものの、人間の生理的負荷への対応は依然として大きな課題だと、台湾メディアは専門家の見解として伝えている。
SCMPによると、弾道飛行は当初、研究や軍事目的で開発されたが、近年では観光や超高速貨物輸送の研究へと展開が進んでいるという。
この分野では米国に加え、中国やロシアも商業サービスの開発を検討している。
ただし、弾道飛行では強い重力加速度(Gフォース)の影響を受けるため、現在のところ訓練を受けていない乗客の搭乗は困難とされている。
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